ストーリーよりも全編に漂う耽美なエロスとデルフィーヌ・セイリグ演じる謎多きエリザベート夫人の妖艶さに魅了されてそんな雰囲気だけで最後まで持っていったところが気になったものの、闇に生きるものの哀しみを謳ったラストの切なさに異形のものの悲哀という題材が好みな私にグッと来て観賞後は良いものを見させてもらったような余韻に浸れた。
怪しさと艶をあわせ持つエリザベートも良いけれど、若い二人の女性も惜しげもなくヌードになるので余計エロチックな雰囲気が蔓延する。ヒロインの人妻とエリザベートに支える秘書、二人のスタイルやファッションが正反対なのも◎。
物語は端正ではあるが、刑事の存在や主人公である男性の父親など思わせ振りなところを出しながらなんの意味もなく映画からフェードアウトしていく。特に変なメイクしている父親はなんなんだ。
それと終盤のサラダボウルでの殺人はちょっと苦笑したけどね、この場面に限らず秘書が事故に遭うくだりや砂場のくだりなど合間合間で強引な編集で誤魔化す力業を使っているのは監督のスタイルなのかしら。
エリザベートの羽織ったマントが彼女の正体につながり、ある人物に被さった姿が捕食しているような姿にダブる演出に痺れる。それがラストに結実するのもイイね。
エレガントな美術や音楽がヨーロッパテイストな怪談映画の内容に似合っている。