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グッドナイト・マミーのTTのレビュー・感想・評価

グッドナイト・マミー(2014年製作の映画)
4.0
厭な映画…。ハネケといいウルリヒ・ザイドルといい、何でオーストリア人監督は鬱々しい映画ばっか撮るんだろう(誉めてる)。本作の監督セヴェリン・フィオラとヴェロニカ・フランツもまた然り。

周りは見渡す限りの田園風景が広がる一軒家で、母親の帰りを待っている双子の少年たち。しかし、顔を包帯グルグル巻きにして帰ってきた母親は、性格が激変していた。「本当にお母さんなのか?」という疑念が最高潮に達し、兄弟はとんでもない行為を犯してしまう。

本作のメインの登場人物は双子2人と母1人の3人で、舞台は一軒家。ミニマムでゆったりとした時間が流れながらも、緊張感が尋常ではないホラー映画だ。

BGMが一切使われず、静けさと潔癖感に包まれた画面で厭な事ばかり展開される感じは、ハネケ作品を思わせる。しかし、それ以上に連想したのは『柔らかい殻』だった。印象画のような田園風景の中、多感な少年の妄想が膨らんでいき、それによって悲劇が起こるところが似ていた。

話が進むにつれて、エグい描写が増えていく。特に後半、双子たちが母親に対して行う仕打ちの、 あまりの痛々しさや絶望感にえづいてしまった。映画観てえづいたのは、『屋敷女』のラスト(モザイクなし)以来だと思う。しかも、それらが如何にも子どもが思いつきそうなアイディアばかりで不気味。

脚本がとても巧妙だった。台詞が少ないために家族の背景がほとんど伝わってこないが、それでも少ない情報だけでラストにしっかり一本の線が繋がるような仕組みになっているのが非常に上手い。また、恐怖を与える側だった母親とそれに怯える息子たちという関係が、徐々に逆転していったのも面白かった。  

強いて難癖付けるなら、オチが『あ○を○○し○○○ん』(タイトル書いただけでネタバレになるので伏せる)まんまだったのは萎えた。観終わった直後は、それまで独特な世界観と物語で進んでいたのを、ありきたりなオチで終わらせるのはどうなんだと思った。しかし、 双子の片方の服だけが汚れていないであるとか、耳打ちという何気ないディテールがクライマックスの伏線として効いていたので、そこまで目くじら立てる程でもないかと考えを改めた。
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