豚肉丸

歩みつつ垣間見た美しい時の数々の豚肉丸のレビュー・感想・評価

5.0
ジョナス・メカス監督が撮り溜めた映像を繋ぎ合わせた映像集

大学に合格したので4月から「受験終わったら絶対に見るぞ!」と心に決めていた本作を鑑賞。
ジョナス・メカス監督による5時間の映像日記。映されるのは主に彼の家族や友人、そして彼の娘であるウーナの成長記録。繋ぎ合わされた順番も時系列順ではなくバラバラなため、本当に映像を繋ぎ合わせた印象が強い。しかし映画内で何度も語られるように本作は人生における「幸せな瞬間」を切り取った映像日記であるため、この時系列に沿ってないバラバラ感がより夢のような不思議な空気感を醸し出している。他人の記憶を垣間見たような、死ぬ前の走馬灯のような、そんな感じ。約5時間とかなりの長尺映画内ものの、不思議と飽きずに自然と見入ってしまい気づけば時間が経っていた...

「美しい時」というテーマが本編内で何度も繰り返される。楽園、記憶...といった言葉が反復し、この人為的な編集に自覚的な作りながらも、それでもタイトルの通り「美しい時」だけを切り抜いた構成に圧倒。ジョナス・メカス監督の早回しやブツ切りカット、荒い色調などの映像の全ての要素が上手く作用していて、夢のような感覚に誘わさせてくれる。他人の人生の追体験としては最高の出来で、「ジョナス・メカス」自身のドキュメンタリーとしても素晴らしい。「私達が過ごす時間や記憶は過去のものになるが、その記憶のいずれかは、私達の存在すらも追い抜き、かけがえのない大切なものと化す...」といったような言葉がラストに挿入されるのだが、本作がまさにただの記憶でありながらも私達すらも超えて保存される大切な時間を体現していて美しい。本当に大好きだし、この映画を観られて良かったです...
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