せーや

ブリッジ・オブ・スパイのせーやのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.3
「不安じゃないのか?」
「…役に立つか?」

1957年、激化する冷戦下で
一人のソ連スパイがFBIに逮捕される。
男の名はルドルフ・アベル。
敵国ソ連の犯罪者の裁判が始まろうとするなかで
保険を専門にする弁護士ジェームズ・ドノヴァンは
彼の弁護を任される。

スピルバーグ×コーエン×トム・ハンクスによる
重厚な社会派ドラマ。

この映画は決してスパイ映画ではない。
ひとりの誠実な民間人の映画だ。

主人公は保険専門の弁護士ドノヴァン。
彼は第二次大戦後のニュルンベルク裁判で
検察として優秀な能力を発揮した法の番人。

家族を愛し、国を愛し、正義を信じる彼が
弁護することになったのは、国家の敵。

当時のアメリカにとってみれば
ソ連=敵であり、犯罪者であり、国民を危険にさらす張本人。
そんな国の、ましてやスパイを弁護するとなれば
非難は免れない。

それでもドノヴァンは
正義の名の下に公平な裁判を行う。
「万人は法の下に平等である」と信じて。

でも裁判は前半で終了。
中盤以降は、より危険な任務が始まる。
敵国に捕らえらたアメリカ兵士と
アメリカが捕らえるアベルの交換だ。

政府は公に関わらず
ドノヴァンは一民間人として交渉に望む。

それがどれだけ辛かっただろう。
それがどれだけ恐怖だっただろう。

それでもドノヴァンは
「正義」を信じ、そして人を信じた。

ドノヴァンはもちろん素晴らしいけれど
アベルにも注目してほしいところ。

国家に忠誠を誓って何が悪い。
国家を愛して何が悪い。
そんなアベルの確固たる信念に
ドノヴァンは惹かれていく。

一方のアベルも
非難にさらされながらも弁護を続けるドノヴァンに
徐々に惹かれていく。
滅多に表情を変えず、無口な老スパイ、アベル。
スパイがどれだけ過酷なものかを物語っている。


Standing Man 不屈の男

ドノヴァンは決して引き下がらなかった。
正しいと思うべきことをやり抜いた。

静かに進むストーリーのなかで
国家と個人の思惑が錯綜する、
そんな見事なストーリー展開。

さらにはセリフ回しやジョークなど
小気味のいいシーンもたくさん。

何より、ラストですかね。
わかっていても緊張感溢れていて。
ドノヴァンとアベルの会話
ドノヴァンとアベルの表情
ドノヴァンとアベルの立ち姿。
すべてが印象的。

さすがスピルバーグ×コーエンです。

重いテーマではあるけれど
あっという間の2時間半。

トム・ハンクスとマーク・ライランスの
素晴らしい演技に拍手。
せーや

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