たりほssk

ブリッジ・オブ・スパイのたりほsskのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.8
冷戦とは、資本主義と共産主義との、政治体制とイデオロギーの対立、戦争とはならないが平和も不可能な状態であって、それはすなわち米ソが互いに核抑止力に頼っていたということでした。

このような厳しく、緊張する時代に民間人の弁護士ドノヴァンは敵国のスパイであるアベルの弁護を引き受けます。バッシングを受けながらも、祖国に揺らぐことのない忠誠を誓うアベルと徐々に心を通わせていき、結局ドノヴァンの尽力によって、アベルは死刑を免れることができたのです。
そして次にはソ連の捕虜になったパワーズとアベルを交換する交渉を任されることになります。交渉地である東ベルリンに向かうドノヴァン。しかし彼はその時東ベルリンで捕虜になっていたプライヤーも同時に解放するように交渉を始める……

全体を通じて根底に流れるのは、立場や主義を超えて、人の存在自体を受け入れることのできるドノヴァンの度量の深さとあたたかな心だと思います。人の命を救うために任務以上の役割を果たそうとするその姿には感動してしまいました。東ベルリンに行ってから風邪をひいて鼻をかみながら早く帰りたいなどというところにはすごく人間味を感じましたし、アベルがドノヴァンの絵を残したこともとても印象的でした。

また当時の状況の再現にも目を見張りました。特にベルリンの壁が造られる場面、壁を乗り越えようとする人々の姿は忘れられません。
終始淡々とした進行というのがまた良くて、冷戦という特異な時代背景の下に起こった事実を、人の心とともにていねいに描いた素晴らしい作品でした。
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