菫

この国の空の菫のレビュー・感想・評価

この国の空(2015年製作の映画)
4.5
「女の人には何をやっていても美しく見える時期があるんですね」

原作は高井有一の同名小説。
戦争という極限状態のなか、19歳の里子は隣人の市毛に惹かれていく。しかしながら市毛には疎開中の妻と子がいた。

濃密で官能的。市毛に対する里子の感情は、恋愛というより、むしろ女としての本能のようだった。
「Wの悲劇」(監督/澤井信一郎、脚本/荒井晴彦)を観たときにも感じたのだけれど、荒井晴彦は、少女が大人の女になる過程を描くのが上手い。

初日舞台あいさつでの荒井の言葉が印象的だった。
「ネット上に「戦争はもっと悲惨」「(登場人物は)非国民じゃないか」などの書き込みがあった。国が間違った時は、非国民の方が正しいんじゃないか。今またこの国は間違えそうになっている。僕は非国民になろうと思います」https://cinefil.tokyo/_ct/16859422



里子が見た1945年の空も、
今わたしが見ている空も、
あの国の空も、
みんな繋がっている。 
みんな同じ空の下にいる。
どうか戦争のない世界になりますように。
菫