マーくんパパ

この国の空のマーくんパパのレビュー・感想・評価

この国の空(2015年製作の映画)
4.0
静かなドラマだが奥が深い。「里子は私の戦争はこれから始まるのだと思った」「私が1番キレイだった時、まわりの人たちがたくさん死んだ。私が1番キレイだった時、私の国は戦争に負けた」このエピローグの言葉に詰められた想いが胸に響く。東京下町、連夜の空襲でいつ死んでもおかしくない敗戦濃厚な世情を背景に、若い娘(二階堂ふみ)が不道徳と知りつつ隣に住む妻子持ちの男(長谷川博己)に恋し抱かれていく。もしこのまま、ある日焼夷弾に身を灼かれたり戦車に踏み潰されて死んだら何も煌びやかなトキめくことないまま生を閉じることへの焦燥感が理性を超えた行動を取らせる心理状態が痛く染み入る。工藤夕貴が見て見ぬふりする母親役、そんな年になったんだと別の感慨も。終戦で生き延びた2人、男の元へは疎開先から妻子が戻り平和な日常に変わるであろうコレからの日々、心が灼かれ踏み潰されるであろう描かれることのない里子の気持ちを表したズームから静止画で終える顔のラストショットとフレーズの言外の余韻の凄さにやられました。