びこえもん

エレナの惑いのびこえもんのレビュー・感想・評価

エレナの惑い(2011年製作の映画)
3.8
『父、帰る』(2003)で長編デビューにして金獅子を獲得して以来名だたる映画賞を獲りまくっているロシアの名監督ズビャギンツェフの2011年の作品。

皮肉にもかつて共産主義の盟主の地だったモスクワを舞台に、綺麗な高級マンションに住む富裕層と、郊外の雑多な集合住宅に暮らす中流以下の家庭のギャップを描いた作品です。

主人公の女性は富裕層の男と2,3年ほど前に再婚し綺麗で広々としたマンションで暮らしているが、彼女の前の夫との息子は妻子持ちで経済的に豊かでもないのにロクに働かず息子(主人公の孫)のことも甘やかすアカンタレである。成績優秀とは到底言えない孫になんとか大学進学させようと口利きのための金を工面しようとするが、主人公の夫は「自分の息子や孫でもないし、そんな体たらくの他人に金は出せない。成績も大学に入ってやっていけるようなレベルではないし、軍隊に入るのが適切だ」として受け入れない。だがそんな折、あることをきっかけに彼女に魔が差して──

ロシア映画らしい淡々粛々とした語り口で映されてゆく映画ではありますが、静かなるサスペンス性を孕んだ鋭い作品でした。いやしかし人間って恐ろしいもんですね。夫婦愛、家族愛って、一体何なんでしょうか……。