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エレナの惑いのemilyのレビュー・感想・評価

エレナの惑い(2011年製作の映画)
3.9
年上の富豪と再婚し、お金の面では裕福だが愛は冷めきっており別々のベッドで寝て居る。エレナは結婚して二人の子持ちの息子一家の生活の面倒を見ている。夫にも一人娘がおり自堕落な生活を送ってるが、夫は溺愛している。ある日心臓発作で倒れた夫が退院し、遺言書を書き始める。そこにはほとんどの財産を娘に残すと記されており。。

冒頭からエレナの豪華な生活の中にある空虚と、狭く生活感溢れる愛する息子の生活空間を対照的に描写する。板挟みになるエレナ唯一笑顔になるのは孫と触れ合ってる時間だろう。

会話の中心はお互いの子供達であり、それは二人の間の埋まらない溝でもある。生活音の中に言葉にしない怒りや惑いが溶け込み、閉鎖的な見せ方や鏡越しの重なりにより心情の混乱を見せる。扉と扉の死角を利用に、そこに潜む影を心と交差させて行く。対照的な息子一家の描写、子供と同じようにお菓子を食べゲームをするエレナの息子と妻。子供という立場を最大限に利用し、与えられる日々が当たり前になり、それ以上を求める悪気のない態度はエレナの大きな重石となり、しかしそれが生きる目標となり、行動を起こさせるのだ。

親の思いと裏腹な子供の思い、心の隙にうまく漬け込んで行く子供達の行動は繰り返され、自分の行いはかならず我が身に返ってくるのだ。

与えすぎると人はさらに求めてしまう。足りないぐらいがちょうど良い。たまに与えるからそのありがたみを感じ、感謝されるのだ。親の過剰な"愛情"は子供をダメにしてしまう。家族の形の本質を皮肉にえぐり、時の流れをしっかり感じさせる室内の空間使いが絶品だ。
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