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エレナの惑いの一のレビュー・感想・評価

エレナの惑い(2011年製作の映画)
3.9
『ラブレス』『父、帰る』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品

お互い再婚同士の老年夫婦に訪れる心の変化を静かに見つめたサスペンス

淡々と老夫婦の日常を映していく中、底知れぬ不穏な空気感に終始支配され、カメラ越しに一家を覗いてるかのような映像には息を呑む

初のオリジナル脚本ということでしたがやはり才能というかセンスの塊
普遍的なのに目新しいものをテーマにしてるし、先の読めないサスペンス要素にも申し分ない

エレナ役の女優さんの演技力も然る事ながら、長回しとセリフの少ない寡黙な映像でエレナの揺れる心情が痛いほどに伝わってくる

男性優位なロシアの社会的背景を入れた上で観るとより複雑な気持ちになるし、妻であり母でもあるエレナの必死にもがく姿が身に染みる…

1度堕ちた家族のとどまるところを知らない愚行
何度も赤ちゃんが映されるけどきっと同じ道を辿るということなのだろう…

人の本質にある愚かさをリアルに描きすぎていて絶望しかない
淡々とし過ぎているので地味ではありますが、ズビャギンツェフ作品で最も救いがないかもしれない

エンドロールの音楽も相まって、観終わった後もじわじわ継続される嫌な余韻

おぞましくて不快感強いけど個人的には大好きな雰囲気
これぞズビャギンツェフ作品の真髄

2020 自宅鑑賞 No.264 GEO
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