矢嶋

ザ・レッスン 授業の代償/ザ・レッスン 女教師の返済の矢嶋のレビュー・感想・評価

3.5
劇伴はほとんどなく、登場人物もいわゆる芸能人的な華がない地味な雰囲気。そんな中で金のトラブルで奔走する主人公を淡々と描いているのだが、最初から最後まで生々しい不快感が印象的だ。

本作のすごい所は、ある程度話に関わる人物はことごとくクズである点。主人公の夫がどうしようもない駄目人間なのは言うまでもない。自分に非があるのに主人公には悪びれず、裁判所や金融機関に対しては高圧的というありさま。彼は結局、最後まで解決に一切貢献しなかった。
そして、翻訳業者の社長も給与未払いの末に倒産。更に、金貸しについても期限を延ばす代わりに不正を働くよう脅した挙句、AVのようなことを言いだす。最終的には娘に危害を加えるようなことまで示唆する。
主人公の父親とその後妻は基本的におかしなことは言っていないが、自分が優位と見るや必要以上にネチネチと責め立てるのがなんとも。まあ彼らは、それ以上にチャクラがどうとか急にスピリチュアルなこと言い出したのが面白くてどうでもよくなったが。ブルガリアでは一般的なんだろうか。

そして何より、ナデもまともな人間ではない。冒頭の財布を盗まれたシーンで全員の荷物を被害者に調べさせたのもさることながら、全員から強制的にカンパを集めたのは唖然とした。仮に犯人があの中にいたとしても、それ以外の全員には何の罪もないのに…
競売についての交渉でも、自分達に非があるのに相手を脅すようなことを言いだす。父親を頼れば簡単に解決できるのに、くだらないいたずらをした上に感情的になり暴言。最終的に金を得るためにとった手段からしても、彼女自身まともな人間ではなかったのだろう。それゆえに、ラストでは財布泥棒に何一つ言うことはできなかった。

ひたすら地味というだけでなくとにかく不快感に本気。そこが単にイライラする人も多いだろうが、そうしたリアルな心理描写は評価できる作品だと思う。
矢嶋

矢嶋