stanleyk2001

草原の実験のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

草原の実験(2014年製作の映画)
3.7
『草原の実験』
原題:Испытани(テスト)
英題:Test
2015 ロシア

草原の真ん中に止まっているトラック。荷台に横たわる男。中央アジア系。トラックに乗って草原の中に立つ一軒家に帰ってくる。羊を連れて。

男には娘がいる。20歳前くらい。

娘が運転するトラックで男は出かける。道が二股に分かれる所で娘をおろし男がトラックを運転して去る。

娘は若い男の家に行く。男が操る馬に乗って娘は家に帰る。

欧米人の若い男。カメラで娘を撮影する。写真をスライドにして手回しの映写機で娘の写真を家の白い壁に映す。

大雨。帰ってきた父。防護服を着た男たちがガイガーカウンターで家中を計測する。羊からも放射能の反応がある。

父親は死ぬ。娘は父親を埋葬する。

地元の若者は娘と伝統的な婚礼をあげようとする。娘は拒絶する。

地元の若者は欧米人の若者と娘を巡って決闘するが、、、

あちこちの断片から父親や娘は政府が運営する放射能に関する試験場の近くに住んでいるらしいことがわかる。

台詞が全くないのは政治的主張をしているという証拠を当局に握らせないためだろう。反政府的映画だと認定されると製作も上映も禁止されてしまうから。

アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』を思い出した。

『ストーカー』は『草原の実験』とは正反対にセリフで溢れている。だがセリフは謎めいていてセリフが重ねられるほど謎が深まる。

『草原の実験』はセリフを排して、映像のみで強い主張を打ち出す。

私は映画の舞台になった旧ソ連の中央アジアに近い地域で何が行われたのか調べる。そして世界に広く知られてはいない残忍な実験が驚くべき規模で行われていたことを知る。

きっとそれが監督の意図する事だ。
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