囚人13号

哀れなピエロの囚人13号のレビュー・感想・評価

哀れなピエロ(1892年製作の映画)
3.6
このエミール・レイノーもまた、偶然と必然が不規則に支配する映画史に敗北した男の一人である。

アニメーションが産業となる数十年前であるため、セルロイドではなくゼラチン製のフィルムに一枚ずつ手書きながら、背景とは別で人間を動かすという現代にも通ずる技法を無自覚的に発明していて、これが20年後のウィンザー・マッケイらの作品よりも(動きの滑らかさでは比較にならないが)魅惑的。
二次元の絵を立体的に投影し動かすことで三次元へ接近する、現存のもう一本『脱衣所のまわりで』は登録されていないので知名度がないのかな。

レイノーが自身の発明品=テアトルオプティークを誇らしげにいじって本作を上映している図こそが俺のプロフィール画像なのだが、彼の発明も7年後のシネマトグラフによって化石となってしまうのだった。しかし仮にこの装置の方が後に発明されていたら、逆にシネマトグラフが過去の発明となる世界だったら…映画は存在していなかったかもしれない。なんて…。
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