すず

東海道四谷怪談のすずのレビュー・感想・評価

東海道四谷怪談(1959年製作の映画)
3.5
ある冬の夜、備前岡山の浪人 民谷伊右衛門は逆恨みの挙げ句 お岩の父を斬殺した。それを見ていた外道の直助に弱みを握られ、ゆすられることに。父の仇を探して討つと偽り、一行は江戸へ移るが、当てのない江戸での生活は困窮し、不機嫌な伊右衛門はお岩を邪険に扱う。お岩と年端もない赤子を置いて、ぷらぷらと出掛けて行く伊右衛門。どんなにぞんざいに扱われても健気に尽くすお岩だったが、伊右衛門は外でよからぬ事を企んでいた…。

モノクロかと思っていたけど、カラーだった。舞台は数百年前の東京こと、お江戸である。稀代のクズ伊右衛門と、生粋の悪党 直助の、日本寓話史でも有数の下衆ダブルの余りに醜悪な所業を、時を経て、東京オリンピック2020の行われし時分に見まもるという。哀れなお岩とお袖姉妹と下衆コンビのダブルスの行方は…(??)。数日前の卓球の混合ダブルスは金メダルおめでとうございます…。

伊右衛門は実際、内村航平選手似でキリリと眼光鋭い色男だが、極悪非道、下衆の極み、武士を気取った無頼、卑屈で被害者面した小者、プライドだけは一丁前、微かに残るお岩への情も結局は我が身かわいさだけなのか…?内村選手に顔はよく似てたけど、本当に真逆な属性である。今後は、お茶を買うのも躊躇うほど邪悪な響き〝伊右衛門〟。

自らを蔑ろにしても旦那様に義を尽くした女の情念。お岩の姿の何と無惨なことか。因果応報の教訓じみた人間劇であり、突如、物語の毛色を変えるようなホラー描写は純和製ホラーの伝統の礎を築いた芸術作品であろう。


「この怨み 晴らさずにおくものか~」
すず

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