近本光司

東海道四谷怪談の近本光司のレビュー・感想・評価

東海道四谷怪談(1959年製作の映画)
3.0
冒頭のシークエンスは見ものだった。思いを寄せる女との結婚を認めてもらうべく、夜半の暗がりでその父を待ち伏せる伊右衛門(天知茂)。貴様の如き分際でと取り合おうとしない父に腹を立てた彼はひと思いに斬ってしまう。その傍に立っていた手下たちも次々と斬られ、よろよろと後ろに下がってやがて田んぼに落ちていく。その一部始終を側で見ていた直弼(江見俊太郎)が最後にこそこそと忍び寄り、あっしにいい考えがあるんです、と耳もとで囁く。ここまでがトラヴェリングを交えたワンショット。しかし天知茂も江見俊太郎も本当に悪い顔をしている。事実、妖怪となったお岩の呪いでは帳尻が合わないぐらい、奴らは次つぎと極悪非道を繰り返していく大悪党なのだ。終盤の怒涛のギミックはおもしろいのだが、あまりノレず。大きな数珠をもった人びとの輪の真ん中で南無阿弥陀仏を唱える天知茂。おなじ年に公開された三隅研次のほうも観なければ。