スギノイチ

追いつめるのスギノイチのレビュー・感想・評価

追いつめる(1972年製作の映画)
3.4
「無頼刑事とヤクザ幹部の戦い、そして密かな共鳴」という『ヒート』系映画。
今ではベタベタな題材だが、この時代の日本映画では珍しいんじゃないか。

今回の渡哲也は敵役ということもあり、日活ニューアクション時代のヒーロー像よりは悪どい感じで『反逆の報酬』や『暁の挑戦』の造形に近い。
主人公である田宮二郎も暴力団殲滅に取り憑かれたはみ出し者。
この2人の争いに加え、ヤクザ上層部である睦五郎や佐藤慶の陰謀が絡み合い双方犠牲を出しながら闘争を続けるのだが、その過程で無関係な人々が色々割りを食ってしまう。

まず藤竜也は銃撃により半身不随になってしまい映画から一発退場。
その妻を吉行和子が演じている(『愛の亡霊』カップル)。
藤竜也以上に不憫なのは倍賞美津子だ。
元々は渡哲也の情婦だったが、目の上のタンコブだった睦五郎に寝取られてしまった上に渡哲也にもさんざ利用され、挙句の果てには暴走した睦五郎にスチーム風呂で射殺される。
前年までドリフの映画に出て平和していたのに…

『ヒート』的な熱さやスタイリッシュなアクションは無く、周りを犠牲にしながらひたすら怨念と憎しみをぶつけ合うような話で、一応ハッピーエンドの割に後味もイマイチ良くないのが、いかにも70年代前半の日本映画らしい。
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