せいか

ズートピアのせいかのレビュー・感想・評価

ズートピア(2016年製作の映画)
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12/08、金曜ロードショーにて放送されてたものを観る。吹替版。
放映当時もやけに騒がれてたが、これが騒がれていたのだなあというのはよくわかった。最初から最後までまあよくぞここまでと細部にわたりディズニーディズニーしていた。

極力いろいろ廃してシンプルにまとめれば、押し付けられた役割を押しのけて自分が信じる義を貫き前進しよう、世界は大して美しくはないけれど、他者を認めて愛し、自らはより良く生きることを心がけようという話なのだろう。

自ら憎まれ役になってでもその社会の秩序の一端を下支えする仕事はどれだけ軽んじてもいいみたいだけど(以下に書いたようにある程度加味してもよさそうなところはあるけれど、結局どうあがいてもこの点に関しては駐車違反の件抜きにしてもあった気はする、ないしは他の作品でもそうだけど、またもろもろビミョーに問題とまともに向き合うことからは回避しているというか、かゆい)。
アメリカだと駐車違反を取り締まるのはメインとしては基本的にはいわゆるPEOの仕事なので(警察官ももちろんできる)、あの役職の振り分けからは警察組織からの疎外を改めて露骨に描いているのだという背景がたぶん(たぶん)あるんだろうけれど、それでもああいう描写になって然りと思えるかというか。自分の役職が与えられるべきではない仕事を割り振られる差別というのは分かるけど、その後の振る舞いを私は問題としているというか。まあ、完璧なひとはいないのであまり揚げ足取るななのかもしれないが。結局、どれだけ前を向こうと心の底にある恐怖心はあったり、自分が虐げられていても他人に対してうっかり差別を曝したりをする、実に人間的な主人公として描写されてるので、そういうわけでああいうのも長所としての実直さが短所として視野の狭さとして出てるということなのだろうけど。

弱者として抑え込まれてきた怒りが恐怖による全体の支配や相手の引きずり落としを行うことの歪みなんかは、そうねって感じなのだけど(残念なことに現実でよく見るやつ。本作で取り上げられてるのは大概そうだし意図的にそこゴリゴリしまくってるのは間違いないけど、いかんせん相変わらずながらイデオロギーの押し付けはあるというか)、毎度ながら向き合わずにこっちのがいいよねで一気に陽の光の方へみたいなとこに落ち着けるからこっちは落ち着かない。
権力を盾にして自らの立場に不満を抱き圧政するという言い方で言えば、主人公なんかまさに繰り返すように駐車違反のやつでマイルドな形で自分でもやってるようなものとして描かれてるはずなのにそこにしろ消化されないまま、なんかこう、話としてはまとめてはいるみたいな。
露骨にアメリカの戯画化みたいな作品だったと思うしそのうえで皮肉的なこととかもしてたと思うので、なんかもうはへーだった。ほんとなんかとことん開き直った感じは嫌いではない。好きというわけでもないが。

相変わらず美術がいい。
せいか

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