グラッデン

ズートピアのグラッデンのレビュー・感想・評価

ズートピア(2016年製作の映画)
4.4
肉食動物と草食動物が共に暮らし、「何にでもなれる」ズートピアで警察官として着任した野ウサギのジュディが、キツネの詐欺師・ニックとともに肉食動物の連続失踪事件を追いかける物語。

社会における多様性のあり方について社会背景を踏まえて鋭く指摘するテーマを提示しながらも、物語としては、現代性+ディズニーらしいドリカム精神を併せ持ったヒロイン・ジュディの旅立ちから、凸凹コンビが活躍するバディムービーに仕上げることでエンタメ要素を提供するバランス感覚・作品設計には相変わらず唸らされました。

特に、個人的に本作のテーマと考える「多様性」の捉え方については、非常に踏み込んだ内容になっていたと思いました。その意味でも、本作で大きな役割を担ったドーン・ベルウェザー副市長の立ち位置が絶妙でした。日本でも勘違いされやすいダイバーシティの発想が彼女のような立場であり、彼女が抱いていた認識もまた誤解しやすい発想ではないかと思っております。

だからこそ、本作が教えてくれる最も大事な部分は、種族等の成り立ち(本作で言えば肉食動物・草食動物)に対する偏見を取り除いていくことだけではなく、相互認識・理解をいかに深めていくのかという点だと思います。所謂、エスタブリッシュメントがマイノリティ層に対する理解を示したとしても、その認識が凝り固まったものであればミスリードに繋がる可能性を秘めており、社会全体が多様性に対する認識をどのように深めていくのかが、現代の大きな課題であることを認識しました。

賛否はあるかもしれませんが、ピクサーにしても、ディズニーにしても、作品を通じて、夢・希望を与えながら、現実にも真摯に向き合っている点は個人的に好感を持っています。理想と現実が共存する空間としてのズートピアというのは、まさに、そうした作品群を象徴する世界かもしれません。