自然の祟りを抑えるべく、海に選ばれた少女モアナと変幻自在に様々な動物に変身できるマウイと一緒に冒険し、小ボス、中ボス、ラスボスと3段階の敵を倒していく…というまるでアドベンチャーゲームのような構成です。
映像もきれいで、海のシーンなんかは波の動きとかがかなりリアルでした。
このクオリティのゲームが出たら間違いなく大ヒットすると思います。
しかし映画となると話は別で、映画は何よりもストーリーが大事だと思うのです。
話は単純明快で困ったときはとりあえず歌っとく、挫けそうな時は亡くなったおばあちゃんが慰める、なんだかんだ海が助けてくれて丸く収まる…
あ〜…そうなるよねぇ〜と次の展開が読めてしまい、ストーリーとしてはありきたりで残念でした。
売れるかどうかといったら、それなりに売れるんでしょうが、面白いかといったら面白くなかったです。メッセージ性がないし、子供が見て教訓を得られるような内容にもなっていないです。ストーリーはご都合主義だし、あまりにもパターンにはまっていて先が読めてしまいました。
さっきまでピンピンしていたお婆ちゃんがいきなり死ぬ下りなんて無理やりすぎます。ディズニーは「自立とアイデンティティーの探求」のストーリーラインを保つためにいつも登場人物の家族を無理やり死なせますよね。
話の大部分が少女モアナと半神マウイのやり取りに終始しますが、この二人の会話があんまり面白くなく、もっと笑いがあればまだ見ごたえがあったでしょう。それが喧嘩したり、仲直りしたりのツンデレを繰り返しているだけで、結構どうでもよかったですね。
いかだに乗って広い海を渡るモアナとマウイの目的は、ハートを女神様のもとへと返しに行くことだけで、それ以外の伏線やサプライズが全くなく、二人がほかにやることがないのがストーリー性に欠けます。
だから航海の途中途中でほぼ背景もなく、関係性もない敵を仕方なく登場させ、危険を作っていたのが苦しい演出に見えました。敵キャラが敵になりえていないんですよね。因縁もなければ、そもそも戦う必要がないキャラクターばかりで、存在の意義を感じられませんでした。
ラストのモアナが女神にハートを返すシーンなんかはどこか「風の谷のナウシカ」を連想させました。ラスボスがあんなに素直に言うことを聞いてくれるなら、それまでの戦いはなんだったんだって話ですが。
全体的に良く言えば子供向けの映画、悪く言えば子供騙しの映画です。