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さらば、愛の言葉よのPinchのレビュー・感想・評価

さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)
4.4
誤解を恐れずに言えば、現代の日常生活とそれを経験する人間の感覚のほとんどは不毛であり、くだらない。皆この事実に向き合い、妥協し、仕方がないと思って生きて死んでいく。言語は、そのような日常を固定化する役割を果たす。だから、不毛でもくだらなくもない世界観を得るためには、通常の言語から離れる必要がある。少なくとも、通常とは異なる別の言語が要る。それを日常生活の中に全面的に取り入れた一例がこの作品だ。

ここで語られる言葉はゴダールのオリジナルと思って観ていたが、エンドロールを見ると著名人からの引用のようだ。それはさして重要じゃない。夢ではない別の世界は身近に実在しており、それを自ら、ここ日常で認識しようとする姿勢が重要なのだ。

原題に忠実な訳は『さらば、言葉よ』のはず。仕方がないと言えばそうかもしれませんが、『さらば、愛の言葉よ』という訳は安易な誤解を与え、この映画の理解を妨げるように思います。
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