コズモ

誰のせいでもないのコズモのレビュー・感想・評価

誰のせいでもない(2015年製作の映画)
4.0
ヴェンダース久々の新作。不可抗力の交通事故で子供を殺めた小説家の事故からの年月。いくらでもドラマは浮かぶし、実際に自殺未遂、恋人との別れ、小説家としての成功等いろいろ起こるがそこはヴェンダースで、印象に残るのは主人公が殺された子供の母親の話を聴きながら過ごす一夜だったり、新しい恋人とその連れ子との生活が始まり、否応なく記憶は薄れていくことであったり、昔の恋人と偶然再会して何となく失言をしたことで昔の自分を思い出させられたり、殺した子供と事故の時一緒にいた兄が手紙を書いてきたりといったスペクタクルには遠い出来事で、全てはアメリカの大きな自然の中で大人しく語られる。生きていくことは穏やかな不条理におおらかに耐えていくことなのだと映画は語っている。ノンジャンルの神出鬼没ジェームズ・フランコは顔面演技がたまらないが、合っているかいないか分からないようなハマり方で好演、レイチェル・マクアダムス、ゲンズブールも言うことなし。成瀬的にも見える紛れもないヴェンダース作品。北米の四季をよく捉えていて、風に舞う葉や、揺れる木々が繊細な音響と共に3Dで迫ってくる。
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