海

慶州(キョンジュ) ヒョンとユニの海のレビュー・感想・評価

-
酔いが回った帰り道のおぼつかない足取りのように、音や温度だけを頼りに残っている記憶のように、わたしが知っているわたし自身のことやあなたのことは、あまりにあいまいで、ある日突然にすべての意味を失ってしまうんだ。そうやって自分がしてきたことのいい加減さに気づいてしまった朝、いつだって理由があることを、いつだって理由なんてないこの世界でわたしだけが気づいている。画面の奥に思い出せない過去があって、窓の外にわたしたちが死んだあとの世界があって、目の前でわたしを見つめているあなたの目の中には、わたしがいて、それがすべてだった。望むように愛しあいたい、もっと深く信じあいたい、この心を伝えるための言葉を待っている冗長な時間を守りあいたい、どこで暮らしたって幸せを理解できないことを理解したい、そうやってわたしたちの間に浅い息を繰り返して横たう虚しさは、わたしにひとりではないことを思い出させて孤独でありたいことをわからせる。離れたほうがいい場所があり、望んではいけないひとがいて、一生ふれることのできないその土地の歴史がある。感情の話がしたい、気持ちの話がしたい、やわらかいあかりのもとでやわらかくひかるあなたがどんなにきれいかをあなたに教えてあげたい。そのためにどうすべきかわからなくて、時間だけが過ぎていく。あなたでいっぱいになった最後の夜のあと、あさのひかりの中で、わたしはあなたを忘却の彼方へ押しやることになる。愛の終わりは妙にきれいすぎるけれど、そのうつくしさのあと、あなたがわたしを思い出したときのために、ずっとここでこの手をひらいて、跪いていたいの。わたしのゆらぎやすい感情の中でいつもいつもあなたが、小さな水槽の中の魚みたいに泳ぐの
海