けん

慶州(キョンジュ) ヒョンとユニのけんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画に通底するテーマ
それは、人間(登場人物)の行動原理について、だと思う

主人公の男の行動原理は極めて希薄である
昔の女を呼び出したシーンでは、別に計略や下心を持っていたわけではない。わざわざソウルから出て来ている女に対して、とりあえず飯に行き、とりあえず酒を勧める。ガツガツもしてなければ、飄々ともしているわけだ。女は酒と彼の過去に対して深い行動原理があるのとは対照的に。
権威的な立場にある、自身の学問分野に対してもクソだと云い捨てる。田舎の大学から出世したい、地元の大学教授の行動原理とは対照的に。
お茶屋の娘の行動原理は、死んだ夫と似た耳をした主人公に対する、失ったものを求める情愛から。なんの行動原理もなくただ家について来たから、彼女を求めることもしない彼とは対照的に。そして、彼女がその耳に触れた時、夫のそれとの違いに気づいた彼女は彼を求める行動原理を失うのだ。
そんな彼の行動原理は何か。それは、ただ気になったお茶屋の春画であり、昔の女友達に会うことである。目の前で起きた交通事故とその怪我人よりも、観光案内所の女に否定された、自分があると信じた川の音が彼を突き動かすのだ。
自分の妻への疑いから自殺を遂げた友人の苦悩が、わかろうはずもない。彼はただ妻の歌声を聴くのみである。
生気のないような出で立ちと、立ち振る舞いになるのも当然と言える。

これはそんな、人にとっての行動原理のお話なのかなと思いました。
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