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龍三と七人の子分たちのchi6cuのレビュー・感想・評価

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)
3.5
コメディなので四の五の言うもんでもなく。とにかく面白い!!の一言。最初から最後まで笑いっぱなし。
劇場内もシニアばっかりだけどみんな大笑いで笑い疲れて退室が遅い(笑)
和製ブラックコメディのお手本のような作品。やっぱり日本映画のコメディは任侠だね。

藤竜也と言う役者は「愛のコリーダ」に代表されるようにとにかくセクシーで男らしく悪っぽい。一度にらまれたら絶対に逃げられないような眼光とにおい立つような色気と独特の話し方に気持ちを持って行かれてしまう、稀有な本物の男前。
老いてなおパンツ一丁でのあの艶感。お笑いにさえも惚れ惚れする。
近藤正臣にしても中尾彬にしても小野寺昭にしてもかつては目を見張るような二枚目俳優。
大森組の品川徹、若松組の吉澤健ほか映画界の重鎮たちが「老いた」演技を「老いた」身でコミカルに演じることのこのカッコよさ。
北野武の日本映画俳優たちへ、むしろ映画そのものへの敬意が感じられる。

笑いの中にも任侠という世界の悲哀が随所に見え隠れし、いかに彼らの美学がはかなく時代に淘汰されたものかが感じられる。
暴力により人の命を左右する商売。
だからこそ、彼らは自分の命に対しても誠実で覚悟がある。
義理人情とは覚悟なのだ。
称賛出来ない文化ながら美学として全うしている。

クライマックスのドタバタはまさに映画の醍醐味ともいえる面白さで手に汗握った。
どこまでもおかしく、どこまでも愚かで、どこまでもかっこいいおじいちゃんヤクザは最後の最後までなんだかかわいい。
劇場内にも、かつて映画を熱狂的に愛したおじいちゃんたちがスターの老後を観に来ている。
こういう映画が大ヒットしてくれて本当に嬉しい。
でももっと若い人たちにも観てほしい。
私たち若者がこういう映画を面白がれないと、こんなにかっこいい老後は送れないと思うんだよ。
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