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チャッピーのchsyのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
4.2
見どころは製造されたばかりのまるで赤 ん坊のように何も知らないチャッピーが、製造者とギャンググループに育てられながら、その中での絆を通じて意識を形成してゆくところだが、 「三つ子の魂百まで」よろしく、最後まで教えられたことを守る辺り、その姿が実に健気で、観客の心を掴んだだろう。
さすがに人工知能だけあって、すごいス ピードで能力を獲得してゆく。
その中で、新生児が特定の養育者との親 密な関係を通じてアタッチメント=愛着関係を築く過程が幸いにも(あの環境で!)ちゃんとあった事が彼の運命を確定した。

これは当たり前のようにさらっと描かれ ているが、もしくは娯楽映画としてあえて触れずにいるのだろうが、実は非常に稀で貴重なことだ。
人間は養育環境によっていくらでも愛の ない人間に育ってしまう可能性がある。
荒廃した2016年のヨハネスブルグで あのような生活を送りながら、それでもチャッピーを子供のようにかわいがることのできたヨーランディのそれまでの人生を思うと胸が痛む。
まともな感受性を持つ彼女にとって、ど れ程の苦しみがあったことか。
その苦労が報われる形でのラストに感 涙。

思い出したのはダルデンヌ監督の「ある 子ども」。
チャッピーが生身の子供で、ファンタ ジーの部分を取り去ったらこうなるんだろうな。

この映画は設定が2016年ととても近 いので、未来といえども想像の範疇だったが、未来映画を見ていつも感じる違和感がある。
それは人間の発達は総合的なもので、技 術面だけが著しく群を抜いて発達するというのは想像しにくい。(経済力の偏在はもちろんあるにせよ・・)
科学技術が発達する期間に、人間の他の 意識だって必ず発達するはずだと思うからだ。
だから、ものすごい精密なロボットや武 器が発明されたり、遥か宇宙に短時間で飛んで行ったり、他の星に住んだりできるくらいの時間があるなら、同時に人間の尊厳を守ろうとする主張 や人権意識、格差の是正、そのための食糧確保、コミュニティーの運営、心理学的アプローチ、ソーシャルワークの数々の仕事、それから地球上の 美しいものの価値を理解し守ろうとする心・・・
すべてがその分野ごとに研究され発展し て行くはずなんじゃないだろうか。
せめてそう希望を持たせて欲しい。そん なことを総合的に描いた作品は作れないものか。
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