ヨミ

トイ・ストーリー4のヨミのネタバレレビュー・内容・結末

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は公開前から「ホラー」を一部の人間に予感させながら登場した。
本作予告編で流れたジュディ・コリンズ”Both Sides Now”(1967)のためだ。一聴してなんてことのないポップ・ソングなのだが、トレイラーの公開された同じ年、ある映画を観ていたものには違うものとして聴こえたはずである。
その映画は、(日本においては『ミッドサマー』の激バズで知られる)アリ・アスターによる『ヘレディタリー/継承』(2018)であり、この曲はヘレディタリーのエンディングでかかるのである。
こういう蘊蓄を垂れて「『トイストーリー4』ってファミリー映画のフリしたホラー映画なんだぜ!」と得意になる映画好きは敬遠されるし、「映画好きってこじつけてやだね。素直にみられないのかしらね」と思う向きもわかるが、どうしてもホラーを感じさせる、というか過去のホラー映画を製作者が意識的に入れ込んでいる箇所がある。それが、ウッディたちがアンティーク店に入ったときにかかるレコードである。そこで流れるのはアル・ボウリー"Midnight,The Stars And You”(1932)。スタンリー・キューブリック『シャイニング』(1980)で使用された楽曲である。
どちらの曲も普通に発表されたポップソングである。なのでただ聴いてみるとわからないが、しかしどうしても拭えない2本の偉大なホラー映画の影がこびりついている。
予告編だけならば「そういうこともあるんじゃないの」と一蹴できたものの、レコードのシーンで個人的には「どうしてそういうことするの……!」となってしまった。怖いじゃん。
ホラーという視点で観るとトイストーリーはシリーズ全編を通してホラー要素を重要視しているのだが(そもそも動くおもちゃってチャッキーか?)、ここまで明らかな形でされると身構えてしまう。
ただ、重要なポイントは決してホラー映画として終わらないということだ。これはディズニー映画という巨大プロジェクトの剛腕だと思う。ちゃんとラストで泣いたもの。
最も「おもちゃとしての本質主義」つまり、持ち主(フォーキーからすると更には創造主)に奉仕し続けることが至上命題のウッディは「ゴミに自由を!」と自殺衝動を炸裂させ続ける。しかし、そのウッディは鉄馬の女たちみたいに自由になったボーもの再会によって「無限の彼方」を目指す夢を手に入れる。
これはなんのアナロジーなのだろう。奴隷制とおもちゃ、という項で見たら、ボーは自ら道を切り開く解放論者にも見えるが、ウッディはバズたちがボニーの元に残ることで安心する。非常に複雑である。
いまだにその真髄はわかりかねるものの、最後のシーンでとても泣きそうになった(というか涙が溢れる寸前まで増幅された)ので泣かされてしまったら4近くつける必要が出るなと。しかし『3』ほどの衝撃は残念ながら受けられなかったので0.2を引いた感じである。
ヨミ

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