えるどら

トイ・ストーリー4のえるどらのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
2.4
「いーか!お前はおもちゃだ!飛べやしないんだ!ただのおもちゃなんだよ!」

2/16鑑賞
(✋軽いネタバレ含みます)
今まで積み重ねてきたおもちゃたちの物語をぶち壊すがごとき所業。
トイストーリーが見たいのであって『借りぐらしのアリエッティ』が見たいわけじゃあないんだよ。

今までのトイストーリーではおもちゃは実は生きており、人間に見つからないように陰ながら活動している。だから基本的に人間世界に大きな影響は与えないし、最終的には元に戻ることが暗黙の了解であった。しかし今作はそんなルールを破り、トイストーリーが守ってきた”ライン”を平然と超える。私はそれがどうしても許せなかった。

前作でおもちゃとの別れを描いた本シリーズが何を伝えてくれるのかと期待したら、おもちゃが人間をこけにするお話だった。一体アンディはどんな思いでボニーにウッディたちを託したと思っているんだ。制作陣はトイストーリーの物語が嫌いなんだろうか…?それとも最近のディズニーにありがちな「ポリコレ」とかいうアレのせいなのか?おもちゃたちにも人権があると?意志を持つ存在が人間の所有物として扱われるのは奴隷のようだからやめるべきだと?ボー・ピープが自立した女性として描かれていたのもそれが要因?もうほんとなんなんだこれは。私が憧れたトイストーリーを返してくれよ。

本作から登場の新キャラクター「フォーキー」。自身をゴミとして扱い、隙あらばゴミ箱に向かおうとする。人間の見ていないところで人間から逃げようとする姿は、見ていて気持ちのいいものではなく、イマイチ好きになれないキャラクターであった。むしろ、過去作であれほど忌避されていた「ゴミとして扱われること」を望むキャラクターを登場させることに拒否感すら覚えた。ボニーの成長のために必要なキャラクターであり、孤独な学校生活での唯一の友達であるという描き方はかなり良かった。そんなフォーキーであるが、問題のラストシーンにはあまり関係しないところが引っ掛かった。フォーキーを助ける展開がラストシーンに繋がっていくのだが、そのシーンにフォーキーというキャラの文脈が繋がらないように感じたのだ。せっかくの新キャラで、物語の中心になるはずなのに、ラストシーンには関わらず、キャラとしてもすきになれない。こういう部分も残念だった。

私が最も怒り狂ったのがそのラストシーンだ。おもちゃが人間を騙し、車を運転した挙句、自分から人間との生活を離れるのだ。何度だって言いたいのだが、おもちゃはおもちゃだ。妖精でも、妖怪でも無い。それを十分に理解したうえで、「我々の知らないところではおもちゃたちも楽しくやっているかもしれませんよ」というのがトイストーリーの物語だっただろうが。シドを懲らしめるのと、ボニーの両親を逮捕させるのはまったく違うだろうが。あえて酷い言い方をするが「ナンセンス」である。

あの『トイストーリー3』を作った制作とは全然思えない。スタッフ総入れ替えとかそんなことはないはずだし、誰か「この作品はおかしいよ」って言えなかったのだろうか。「これは僕たちが夢見たトイストーリーじゃない」って言えなかったんだろうか。いったい責任はどこにあるのかなんて私にはわからないが、少なくともピクサーへの信頼度は下がってしまった。近い将来『5』も出るらしいが、あんまり期待できないかもしれない。
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