うめ

ダム・キーパーのうめのレビュー・感想・評価

ダム・キーパー(2013年製作の映画)
3.7
 テレビで放送していたので、鑑賞。ピクサーで「トイ・ストーリー3」で色彩・照明監督をした実績を持つ堤大介さんが独立して作り出した短編作品。第87回アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた。

 ダムの下に作られた町を守るため、一人で風車を回す日々を送るブタくんが主人公。黒いススのような煙のせいで、ブタくんの顔は汚れたまま。それが原因でいじめられている。だが、ある日ブタくんの通う学校にキツネくんがやって来る。

 このキツネくんが落ち込んでいるブタくんを、イラストを書いて励ます(笑顔にする)っていうシーンがあるのだが、このキツネくんが堤さん自身に見えた。イラストレーターとして絵を描いて人を喜ばせる…まさに堤さんがやって来たことなんじゃないだろうか。ピクサーにいた頃のアートワークも温かで柔らかい作品だった。今作のブタくんとキツネくんの交流シーンもとても温かいものだった。

 全体に油絵のような独特のタッチなんだけれど、水や煙といった物の質感の違いがしっかり表れていたのはすごく良かった。特にブタくんが苦しみ走るシーンは印象的だった。

 ブタくんが言っていたように、暗闇に包まれたとき人はどうしたらいいのだろうか。その対処法は人それぞれなんだろうけど、その場にはおそらく自分以外の「人」がいるんじゃないだろうか。そんな事を思ったラストだった。
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