QTaka

ダム・キーパーのQTakaのレビュー・感想・評価

ダム・キーパー(2013年製作の映画)
3.9
パステル画のような優しい絵が動き出す。
優しいタッチが描き出したのは、哀しさと嬉しさと、勇気の湧いてくる物語だった。
.
優しさのあふれる絵とは別に、物語の背景がちょっと厳しい。
この街の置かれた環境をこう説明している。
「大気汚染に覆われた世界の物語。大きなダムによって、汚染された空気の影響を受けずに生きながらえてきた小さな街があった。」
坂の街に大きなゴンドラの乗り物が吊られている。
その街並みの背景に、大きな壁が見える。
それがダムだ。
ダムの上には風車がある。
夕方、ダムの縁を溢れるように黒い霧が迫ってくる。
.
物語の主役ブタ君。
彼は、お父さんから重要な役割を引き継いでいる。
夕方のダムに迫る黒い霧。
ブタ君は、時間に正確に、羽車を回しだす。
すると、ダムの上の風車が徐々に回りだす。
そして巻き起こした風で黒い霧を吹き飛ばす。
彼は、ダムキーパー。
こうして毎日ダムの上の風車を回して、黒い霧が街に降りてくるのを防いでいる。
.
学校ではいじめられっこのブタ君
そんな毎日が、転校生のきつね君で変わり始める。
屈託の無い明るい性格のきつね君は、クラスの人気者になる。
そんなきつね君と仲良しになったブタ君は…
.
ちょっとした行き違いから、ブタ君は傷つき、いつものブタ君じゃなくなっちゃう。
大事な時間が来ちゃったのに、大丈夫?
すると、街が大変なことになっちゃって…
さあ、ブタ君どうする?
.
お父さんの言葉
「ダムキーパーの仕事は、街を暗闇から守ること」
ブタ君が、本来の自分に戻った時。
そこには、大親友のきつね君が居てくれた。
.
この映画を見て気付くこと。
私たちの日常生活は、一体どうやって成り立っているのだろう。
誰が、この明るい世界を守ってくれているのだろう。
そして、まっ暗闇の街に陽が戻ってきた。
.
ダムから溢れて、町を襲う黒い霧。
霧を吹き飛ばして町を守るダムキーパー。
今、現実の世界を襲っている感染症。
平和な日常を奪われた私たちに、この物語は胸に刺さる。
この日常を守ってきたのは誰だったのか。
そのことに気付かなければ、現実世界の霧は晴れないのかもしれない。
.
この物語、元々絵本だったんだね。
絵本も見てみたくなりました。
QTaka

QTaka