YouTubeなどで動画の投稿がますます身近になってきた現在。
ますます評価の上がっている作品です。
主人公のルイス・ブルームは学歴なし、人脈なし。
近くでくず鉄を盗んできては業者に売って金にするという荒んだ生活を送っていた。
ある日ルイスは偶然交通事故の現場に遭遇し、
その模様を撮影しているクルーを見かける。
撮影者によると、この映像をテレビ局に持っていくと、
高い値で買い取ってくれるそうだ。
ルイスは閃き、高級自転車をビデオカメラと警察無線傍受機とを物々交換し、それらを使い、車強盗の襲撃後の現場を撮影し、ローカル局に売り込みに行く。
テレビ局では高い評価を受け、
もっと刺激的な映像が欲しいという。
ルイスは自分と同じように学歴のない貧しい青年をアシスタントとして雇い、より過激な映像を収めるようになっていく・・・
面白い。
まずルイスのキャラクターがいいですね。
交渉術に長け、学はないのですが己の才覚でのし上がっていく姿。
自分の行動を信じ、
そこには倫理観や道徳観がまるでない。
人間ひとつ刺激を体験すると、ましてやそこに報酬が発生したりするとより強い刺激が欲しくなる。
それまでの刺激では満足できなくなる。
これ、所謂迷惑系YouTuberなんかと同じ心理ですよね。
彼等もより多くの再生数を求めて、道徳倫理を考えずより行動が過激になっていく。
いや、Twitter(X)やFacebookでより多くのイイねをもらうために投稿にいそしんでいる人たちも同じ心理なのかも。
デフォルメされているが、ルイスはそんな承認欲求の塊を形にしたものなんだ。
映像感覚もいいですね。
特に夕方から夜の場面の光の使い方。
夜空に飛行機が飛んでる場面なんか、もしInstagramだったら思わずイイねボタンを押したくなるほどでした。
クライマックスの銃撃シーンも迫力があったのですが、
そこに至るまでのカーアクションシーンの見事なこと。
思わずウォルター・ヒル監督の佳作、
『ザ・ドライバー』(1978)を思い出しましたよ。
より刺激的なもので視聴率を稼ごうとするマスコミの姿勢は、シドニー・ルメット監督の『ネットワーク』(1976)を思い出したし、女性ディレクターの存在は、同作のフェイ・ダナウェイのようでした。
主演のルイスを演じるジェイク・ギレンホールは様々な役を演じていますが、本作でも好演。
その憂いのある表情はアル・パチーノとメル・ギブソンを足したようないい感じでした。
主人公の成功を暗示して終わるラスト。
ただ、視聴者は熱しやすく冷めやすいもんだよと主人公に言ってあげたくなりましたね。