LalaーMukuーMerry

とうもろこしの島のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
4.1
なんでこんな所で(島といっても砂だけのホントに小さな中洲)トウモロコシを作るのか?!と呆れる。夏に雨があまり降らない地中海性気候だからできること? 日本の感覚ではひと雨ふって水嵩が増せば絶対水没してしまいそう。冬に川は氾濫し、春に新しくできる中洲は最初に自分のものと主張した人のものになるらしい(旗を立てるだけでOK)。
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中洲にマイ畑を作ったお爺さんとその孫娘(12歳くらい)のひと夏のトウモロコシ栽培の記というところでしょうか。中洲に手漕ぎボートでやってきて、掘っ立て小屋を建て、畑を耕し、種をまき、苗の世話(鹿に食われないように見張り)をし、夏の収穫、秋になると再び雨が降り始め、冬に中洲は水没してしまう・・・次の春には新しい中洲ができ、そこにまた人が畑を作りにやってくる。淡々と続く人の営み・・・
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二人には中洲以外にもたぶん家があってそこでの暮らしもあるはずだけど、そちらは全く描かれない。娘の両親が死んだ原因は戦争のためだろと想像するがその説明もなし。二人の暮らしぶりから描かれてないことを想像するだけだ。
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時々モーターボートで兵士たちが通り過ぎる。ジョージア兵が通り、アブハジア兵も通る。敵から逃れてきた負傷兵を匿ったこともあった。「みかんの丘」のようなことになるのだろうか? と緊張するが・・・少女から抜け出す微妙な年ごろの娘と、傷のなおった兵士とのじゃれあい、そっちか! 複雑な表情のお爺さん。(緊張の場面もあるのだけれど)いつの間にか兵士は去り、再び淡々と時は流れだす。
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舞台はエングリ川???・・・どこ? Googleマップで探したが出てこない。でもエングリ・ダムというのがある。ダムはジョージア領内にあるがアブハジアとの境界近く。ダムの下流、エングリ川がコーカサス山脈を抜け出て平地に出ると、この川が境界になる。おそらく、この辺りが舞台に違いない。
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Google マップではアブハジアはジョージア領ということになっているが、ソ連邦崩壊後ジョージアが独立した直後から、アブハジアはジョージア領ではなく独立国だと主張して紛争が続いている(アブハジア紛争)。この戦争の地で暮らす人々を描いた映画「みかんの丘」はとても良い映画だった。この作品でも、時々銃声が遠くで聞こえるし、兵士も登場するが、主題は戦争ではなく「人々の暮らし」だ。ほとんどセリフなく進みますが、とても雰囲気があって良い映画でした。