アリ

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちのアリのレビュー・感想・評価

4.0
プレミアム上映で見てきました。
シンプルなストーリーで、とても端正な画面の寓話的作品。

前半、国境の廃船で自活する幼い少年の姿には冒険もののおもむきさえあって、シビアな状況なのにちょっとワクワクしてしまうくらいでした。
(配給会社がその気になれば家族向けとして売り出せそう)

一人で生きる少年の元に思わぬ闖入者が現れ、セリフが極端に少ない中で(何せ言葉が通じない)緊張関係が次第にゆるみ、そこにまた新たな緊張が、と背景に現実のイラク戦争を置きながら、そこで起こる出来事自体がひとの繰り返す争いごとの小さなモデルケース。
あのあまりに突然な、でもどこかずっと予感されているような終幕も、繰り返される悲しみがもたらす不条理さそのままなんだろうなぁ。

あの赤ん坊は結局なんだったのとか米兵は単独行動でいったい何しにきたの(脱走兵ならあんなところでのんびりしてる自体がどうかと)みたいなユルい疑問は置いといて、またいつか見てみたくなるような映画でした。

(日本語タイトル、珍しく公開用タイトルのほうが好み。主人公は孤独だからこそ境界線が生まれるたびに境界線を越えることができる。自分の世界に誰かが侵入してきたと感じたり、誰かとの境界を感じるときに、この映画を思い出せたらいいなー)
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