あるる

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちのあるるのレビュー・感想・評価

4.2
BGMがないからとても静かで音が響く。風の音、歩いて軋む音、爆発音。傍観者になった気分だった。

国籍も言葉も違う3人。コミュニケーションも取れないし、お互いのバックグラウンドもわからない。敵かもしれないから自衛もするし、逆に危害を加える気がないことを証明するのもひと苦労。

明らかに無害で何の力もなくて守らなければいけない小さな命が、3人をつなぐ。赤ちゃんに向ける表情で悪い人じゃないってわかる。

女の子が男性に家族の意味を問うシーンが切なかった。痛いほどわかる人なのにね。戦争は個を失う。国対国の大きな括りになってしまう。国の意志=個人の意志ではないのに。人を思う気持ちは同じでも、守るために殺し合う。

この映画は明確に語らないけれど、言葉の端々や表情で、何があったかを想像させられる。
最後は悲しい結末を想像してしまった。出会う前の少年も孤独だったけど、得た後の喪失による孤独は、出会う前と全く違ったものだろう。少年の瞳が悲しかった。
あるる

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