Donatello

ワイルド・スピード SKY MISSIONのDonatelloのレビュー・感想・評価

3.8
"Fast & Furious"という原題にワイルド・スピードという邦題をつけた人もよもや7作も続くとは思ってなかったと思いますが、最早グッジョブだったというのは認めざるを得ないわけですけども、カーレースの話がこんな事になるとも決して思ってなかったでしょうね。

今や文句の付け所も見当たらない程にブロックバスター映画となったシリーズではありますが、ココまで押し上げたのは前4作を担当したジャスティン・リン監督の手腕が大きかったように思うんですよね。
比較的無茶なカーアクションに、割とリアルさを追求して、それでも相当無理があるんですけど、なんとなく「んなわけねーだろ。でもカッコいい」という複雑な感想を植え付ける事に長けていましたから。

それなのに高級車が惜しげもなく壊されることに心を痛めたのか、前作のラストにあんな前フリ持ってきておきながら、あとはよろしく的にいなくなるのもどうかと思うんですけどもね。

で、そんな無茶振りを引き受けたジェームズ・ワン監督ですが、この世のものではないモノを題材とする事に抜群の才能を発揮する監督ですけども、『狼の死刑宣告』のようなバイオレンス作品も撮れるポテンシャルはあるだけに、そこそこ期待してた訳ですよ。

まぁ結局のところポール・ウォーカー君が亡くなったのは、大きかったと言わざるを得ない出来だったなと。

なんせシナリオに無茶があり過ぎる。
過去作にもなかったわけではないけども、予想を遥かに超えるツッコミどころの嵐。
物語進行の大半の目的であるハッカーもチップも殆ど意味をなさない体たらく。

そりゃ分かりますよ。こんなに車壊すなら中東マネーが必要だって。だからと言って、無理矢理アブダビ行くことはないだろと。それならセット作ってライカン・スポーツ本当に飛ばしておけよと。
予告でチラ見したからわかっていたものの、フルCG然としたあのビルジャンプシーンは最も萎えた瞬間でしたね。

直近の前二作において、金庫を2台の車で引っ張って街中を爆走したり、複数台で戦車や飛行機を壊したりしたのもそこそこ無茶苦茶ですが、それなりのセットで上手いこと編集されてるなぁと思いましたけども、今作は全体的に無理矢理感が半端ない。
山の中を爆走するシーンはそれでも良かったんですが、それですら既視感ある感じでもう少しシリーズならではのイマジネーション溢れるアクションで果敢にせめて欲しかったです正直。

好きなシリーズではありますが、ポールの居ないシリーズに意義を感じないところがありつつも、それでも作り続けるなら次は宇宙に行ってもらったって構わないですけど、普通のカーアクションは『ニード・フォー・スピード』シリーズなんかに任せて、トコトン想像を絶するシーン構成で続編を作ってもらいたい。

しかしながらポール・ウォーカー君を偲ぶ意味で、ジェームズ・ワン監督だからこそのあの象徴的なラストだったというのはある意味認めざるを得ない、そういう意味では素晴らしい作品だったとは思います。
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