三隅炎雄

博徒一家の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

博徒一家(1970年製作の映画)
3.5
博徒シリーズ7作目ということになっているがオールスター仕立ての作り、話の主人公は鶴田浩二でなく高倉健なので、7作目と言っていいのかどうか。仕上がりは同じ小沢のオールスター映画の秀作『博徒列伝』に遠く及ばない凡作である。
ただし注目点もあって、高倉が継ぐはずだった島内にある浅草六区の映画館を、非力な新親分大木実が新興やくざ渡辺文雄に渡したせいで、そこに新鉄道の駅舎が出来てしまうという筋が、没落日本映画への痛烈な皮肉を感じさせ、この趣向は小沢後年の『女必殺五段拳』に繋がっていく。69-70年の2年間は小沢作品がパッとしない時期だから、会社への含みがあったのかもしれない。『渡世人列伝』などはオールスター映画にもかかわらず雑なカメラワークのやる気のない出来だった。これはあれよりはいいが。

ラストは映画会社上層部を重ねるように渡辺を叩き斬って、血塗れで抱き合う高倉と鶴田だが、それでも日本映画は滅びていく、といったニュアンスだろうか。現代やくざ映画からそのままスライドしてきたような渡辺文雄のシャープな演技が見ものである。
三隅炎雄

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