コマミー

エクス・マキナのコマミーのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
3.8
【近づき、近づく】


[気まぐれ映画レビューNo.166]




「MEN」が公開中の"アレックス・ガーランド"が映画監督デビューを飾った作品。
"A24"が配給し、低予算でもちゃんと作り込めば"アカデミー賞"に届く事を証明したSF作品だ。これまでダニー・ボイル作品やカズオ・イシグロ原作の「わたしを離さないで」などの脚本家として知られたガーランドが、初監督作でアカデミー賞を獲る作品を作るなんて、素晴らしい瞬間を目にしたなと感じている。

さて、本作は従来の"AI技術"を描いた作品の様に、"人間の感情に近づいた"高性能のAIが人間に触れると言う物語の中に、その先に待っている"科学的には進歩的"でありながらも"生身の人間にとっては恐怖"を覚える内容を織り込んだスリラー作品として描いている。ウィル・スミス主演の「アイ、ロボット」やアンドロイド以外で言うと、クローン技術の闇を描くゲイリー・シニーズ主演の「クローン」が例に挙げられる様に、科学が作り出した"無機質→人工物"が"人間にとって代わる"未来を非常に魅惑的で不穏感満載に描いている。

いわゆる"シンギュラリティ"である。人間も進化する事で、日々の暮らしを快適に過ごしてきた訳だが、アンドロイドのような人工的な存在でも同じ事で、進化する事で"人間をも超越した存在"にもなり得ると言う事を、本作ではラストで一気にそれを明らかにしていくのだ。ラストのあの展開は、幾重にも想像でき、そして現実的に未来について考えさせられるものとなっていた。

"エヴァ"の透明的な美しさも見惚れるものがあるのだが、"キョウコ"のアジア的な顔立ちで且つ如何にも最も機械的な存在もとても気になった。そしてエヴァとキョウコの関係は、"人間同士の不穏な関係"にも通ずるものがあって背筋がゾッとした。そこまで人間に近づかなくても…と思ってしまった。それを演じた"アリシア"と"ソノヤ"には脱帽である。

アレックス・ガーランドはこれからも映画監督としても物語を創造する作家としても、充分にまだ飛躍できると信じている。その証拠に、今回の「MEN」がどんな世界観を見せてくれるのか楽しみで仕方がない。

彼もまた、高みに向かって近づき、そして確かに近づいているのです。
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