MikiMickle

エクス・マキナのMikiMickleのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
3.9
世界最大の検索エンジン会社で働くケイレブ。
社内の抽選に当選し、大統領でも会えないほどの大物社長ネイサンの別荘へと招かれる。
そこで彼に依頼されたのは、人工知能AIの女性エヴァをチューリングテストする事だった。

本来ならば、相手がAIだと知らずに行い、いかに人間に近いか、果たして人の真似をしているだけなのか、それとも人の様に実際に考えて行動しているのかを試験するチューリングテストだが、これはあらかじめ相手がAIだとわかった上で行う事に。
顔は人間だけれども、体はスケルトンの機械のエヴァ。
ピュアで可愛らしく、ウィットにとんだエヴァ。
日々の限られた時間の中のテストでの会話で、ケイレブもエヴァも、お互いに好意をいだき始め、人とAIの間の関係性の戸惑いを感じはじめる。

そして、度々起こる停電。監視カメラで見ているネイサンの目が届かないときにエヴァの告げた「ネイサンを信じないで。彼の全てを…」という言葉… 。「助けて…」と…。

ケイレブは段々とネイサンに疑いをいだくようになっていく…
そして、このテストにも。一体、何が試されているのか……

という、閉ざされた環境の中での心理戦が繰り広げられるSFサスペンスです。
もうひとり、キョウコと呼ばれる日本人女性もいます。彼女は英語がわからないため、一言も喋りません。彼女の存在も不気味です。その4人の攻防戦、心理戦、謎…

広大な自然の中の、人工的な別荘。
自然の作り出すものと、人が作り出すもの。
その対比もうまかったです。
その美しい建物は、徐々にその閉鎖的恐ろしさを醸し出していきます。

AIというものに対して、私たちがどういった感情をもつのか…という事について、考えさせられます。AIに人権はあるのか、人が作り出したものである機械は、人以下のものであると思ってはいないか、AIに感情はあるのか……

ネタバレゆえに、これ以上は言えないけれど、この事は、未来だけの話ではなくなっていると思います。

この映画で、ネイサンが検索エンジンの会社をたちあげたのも、AIを作るため。人類全てのデータが、人工知能に組み込まれているのです。表情ひとつひとつにしても。それって、実はとても恐ろしい事… 自らの知らない場所で、自己が顕になっていく…これは、現実の話でもあります。

AIのエヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルは、最近では『コードネーム U.N.C.L.E』でキュートな強さを発揮していましたが、今作では、不思議な可愛らしさと、キュートさと、色々な魅力満載で、数々の賞にノミネート&受賞しました。
ケレイブに好かれようと、そっと、彼好みの花柄のワンピースをまとい、ショートカットのかつらをつけ、人になろうとする姿など、とても可愛らしかったです♪ その他、色々も良かったです。

そして、アレックス・ガーランドの初監督作品。色々と細かな演出を感じられて、良かったです。壁に飾られるクリムトとポロックの絵も、対照的でありつつも映画に良い効果を与えていました。
また小説家・脚本家ということもあり、台詞ひとつへの思いやそれを言うシチュエーションなど、細かく考えているんだろうなと、思いました。
とにもかくにも、とても余韻を残す映画でした…美しさと、静寂と、ジワジワとした恐怖と、リアルな世界との関連と…
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