わさび

ベル ある伯爵令嬢の恋のわさびのレビュー・感想・評価

ベル ある伯爵令嬢の恋(2013年製作の映画)
3.8
主人公ダイド・エリザベス・ベルの事は、以前から気になっていた。
奴隷制度がまだ根強く存在していた時代の英国にあって、白人の海軍人と奴隷である黒人女性との間に生まれ、当時としては異例中の異例として、父方のジェントリ階級の白人家庭に引き取られ、そこで実子同然に育てられた実在の黒人女性だ。
長じた彼女が又従姉と共に描かれた肖像画は、当時の白人と黒人が(ほぼ)対等な立場として同じ絵に納まっているという珍しい特徴から、今も貴重な資料として残されている。

邦題に「ある伯爵令嬢の恋」とあったので、てっきり単なる恋物語なのかと思っていたのだが、本作は奴隷制度問題、人種差別、身分差別、性差別など、ダイドを取り巻く様々な社会問題が扱われ、その中で彼女が抱く感情の動きや、彼女が下した決断などを描いている。とても複雑で、論ずる価値のあるテーマが沢山取り上げられているのだ。それを「恋」だけで片付けた邦題には、甚だ疑問を感じる。せめて「ある伯爵令嬢の人生」とか何とか、名付けられなかったものだろうか。

映画の内容に関しては、テーマや役者は良かったのだが、演出(盛り上げ方)が今一つパッとしなかった。後半はそれなりに見応えがあったけれど、前半は少々退屈で、ダイドの個性もこれといって感じられず。何と言っても、特別な生き方をしてきた女性だ。もっと活き活きとしたキャラクタとして描写した方が、より観客を惹きつける素敵な作品になったと思う。
わさび

わさび