かたゆき

余命90分の男のかたゆきのレビュー・感想・評価

余命90分の男(2014年製作の映画)
3.0
最愛の息子を事故で亡くしてから、常に怒ってばかりの偏屈オヤジになってしまい誰からも嫌われる孤独な男、ヘンリー。
健康診断の結果を聞きに病院へと向かった彼は、そこに現れた代理の若い女性医師シャロンから衝撃の事実を聞かされる。
脳動脈瘤。
その病名に到底納得できない彼は、そこで彼女と酷い口論となってしまうのだった。
一方、唯一の心の慰めであった飼い猫を亡くしたばかりのシャロンは、彼の理不尽な物言いについつい激高して出鱈目な余命を告げてしまう。
「そうよ、あなたの余命は90分!せいぜい悔いのないようにね!」――。
常に怒ってばかりで家族からも見放された偏屈オヤジは、その短い時間で自分を見つめ直そうとするのだが……。

名優ロビン・ウィリアムスの最後の主演作となったのは、そんな終始小気味よく進む軽いタッチのヒューマン・コメディでした。
さすがに余命90分というのを簡単に信じ込んじゃう主人公には違和感があるし、なのに映画の上映時間が84分しかないというのもご愛嬌だけど、まあ最後まで軽~い感じで観ていられる娯楽作としてなかなか面白かったです。
最後のセックスをしようと別居中の嫁の家へと乗り込んじゃう主人公とか、まあアホですよね(笑)。
そんな一向に共感できない主人公なのですが、自分のキャリアを潰されまいと彼のことを追いかけて街を駆けずり回る一方の女性主人公シャロンが好対照をなしていて、作品にいいアクセントを与えておりました。
うん、気軽に観られるエンタメ映画としては、ぼちぼち面白かったんじゃないでしょうか。

以下、個人的な感想。
そんな精神的に問題を抱えている主人公を演じた名優ロビン・ウィリアムズ。
この映画に主演したのを最後に、彼が長年の闘病生活の果てに自死を選んだことは周知の事実でしょう。
結果論とはいえ、このすぐ後に自ら命を絶つことになる人が、これから自殺しようという人間を演じるのはやはり見ていて痛々しいものがあります。
映画の中の彼にはちゃんと救ってくれる人がいて助かったのですが、現実での彼にそんな人がいなかったことがつくづく残念でなりません。
「ここで死んだらあなたの人生も周りの人々も取り返しがつかなくなる」という劇中でのミラ・クニスの言葉が彼の心に届くことはなかった。
遺された僕たちは、哀しいですが、彼のご冥福を祈ることしかできません。
かたゆき

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