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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 映画は『マイティ・ソー バトルロイヤル』の続きで幕を開ける。再び蘇ったソーの義弟で宿敵のロキ(トム・ヒドルストン)は満身創痍で苦しみ喘ぐソー(クリス・ヘムズワース)を前にどうすることも出来ない。彼の身体を拘束しているのは、銀河系最強の悪魔サノス(ジョシュ・ブローリン)に他ならない。彼がロキの持つ四次元キューブを発端とする「インフィニティ・ストーン」を回収出来るかが今作の物語の骨子となる。最高のヴィランはこれまでもうっすらとその影を匂わせて来た。幾多の惑星を滅ぼして来たサノスは、故郷タイタンの滅亡を止められなかった苦い過去を持つ。映画は彼の暗部が「インフィニティ・ストーン」による絶対的支配に邁進する彼の病巣を描き出す。今作の主役はトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)でもスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)でもドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)でもなく、過去最高のヴィランの登場を力感を持って描けるかにかかっている。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のこれまでの18作の集大成であり、記念すべき1作目の『アイアンマン』から数えて10年の集大成となる物語は、アベンジャーズ陣営よりもサノスという敵役にフォーカスした異色の作品である。

 予告編フッテージでも総勢60人以上のMCU史上最高のクロスオーバーぶりは予期していたが、賛否両論巻き起こりそうなのが、アベンジャーズ陣営とガーディアンズ・オブ・ギャラクシー陣営との歴史的フュージョンだろう。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の蜜月ぶりから『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での確執の経緯も踏まえ今回、トニー・スタークとスティーブ・ロジャースの因縁の再会は叶わないものの、地球と宇宙の両方で、壮絶な死闘を演じる。予告編で予測出来たように、フェーズ3になったことでドクター・ストレンジやピーター・パーカー(トム・ホランド)やティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)にも満を辞して大きな見せ場が用意されているがその反面、クリント・バートンことホークアイ(ジェレミー・レナー)の撤退にはやや不満も残る。総勢60人以上の人間たちが交わるマニア垂涎の展開にはよだれが出るものの、ルッソ兄弟の物語展開は並行する時間軸を何が何でも平等に描き過ぎるあまり、細部の展開がややおざなりなのは気になった。特に中盤のサノスとガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、ネビュラ(カレン・ギラン)の関係性がややテンポ感がなく、冗長なのは気になった。とはいえ、直近の『ブラックパンサー』の意匠を意識したクライマックスの死闘の魅力にはやはり抗えない。キャプテン・アメリカとマイティ・ソーの虎の子の武具の奪還という裏テーマもしっかりと回収している。

 だがこれまでのMCU作品を見守って来た者からすれば、心底絶句するクライマックスは、向こう10年の劇薬ともなり得るMCU史上最大のショッキングな事件に違いない。心底おぞましいクライマックスの直視出来ない展開は、これまでMCU作品を愛して来た人間を持ってしても、許容出来るか否かの分水嶺のような、何とも言えない問題作である。ラストのトニー・スタークの苦み走った表情が何よりも雄弁に物語る劇薬と呼ぶにはあまりにも問題作である。
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