エイデン

ブラックパンサーのエイデンのネタバレレビュー・内容・結末

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

何百万年も昔
宇宙一硬い物質“ヴィブラニウム”でできた隕石がアフリカに落下
その影響を受けた植物もあったが、やがて人類が誕生し5つの部族がその地に移り住み、そこを“ワカンダ”と名付けるのだった
それからしばらくは部族間の抗争が続いていたが、やがて1人の戦士がパンサーの女神バーストに導かれ、“神秘のハーブ”を与えられる
戦士はハーブの力で、超人的な筋力やスピード、洞察力を得、ワカンダの国王にして守護者である“ブラックパンサー”となった
4つの部族は彼に従ったものの、“ジャバリ族”だけは道を違え、山の奥深くへと引き篭もることに
やがてワカンダはヴィブラニウムを用いた先進的な技術力によって発展するが、世界が混乱に見舞われたことで、ヴィブラニウムを守るためワカンダはその真の姿を隠し続けることとなるのだった
1992年カリフォルニア州オークランド
この地で身分を偽って暮らしていたワカンダ人のスパイ ウンジョブの元に、兄である国王ティ・チャカが訪問する
ティ・チャカは武器商人ユリシーズ・クロウによってワカンダからヴィブラニウムが盗まれたことを伝え、彼に情報を流したのがウンジョブであると糾弾すると、ワカンダへと帰り裁きを受けるよう命じるのだった
現在
国連の爆破テロにより父ティ・チャカを失った王子ティ・チャラは、近衛兵“ドーラ・ミラージュ”の隊長オコエと共に、人身売買組織に潜入していたスパイで、想い人でもあるナキアを迎えに行く
その目的は、父の死を受け新王となることが決まったティ・チャラの即位の儀式に出席してもらうためだった
そのままワカンダへと帰還したティ・チャラは、天才的な科学者でもある妹シュリと母ラモンダ王妃に出迎えられ、儀式の準備に追われることに
翌日 ティ・チャラは、司祭ズリの進行で即位の儀式に参加する
この儀式は即位に反対する各部族や王族が新国王に挑戦することができるというもので、一騎討ちで相手が降伏するか死ねば、新国王の座を奪い取れるというもの
特殊な飲み物でブラックパンサーの力を失ったティ・チャラは、突如として現れたジャバリ族の長エムバクの挑戦を受けることに
予想外の事態であったものの、激しい戦いの末にエムバクは降伏し、ティ・チャラは正式に国王へと即位するのだった
儀式後、再び神秘のハーブを口にしたティ・チャラは、ハーブの持つ幻想的な力で夢の中にて父と再会
不安をこぼすティ・チャラは父から激励の言葉を受けるのだった
そんな折、ロンドンの博物館に、クロウと死の商人(“キルモンガー”)とあだ名される謎の傭兵エリック・スティーブンスが押し入り、ヴィブラニウムでできたワカンダ製の展示物を盗み出すという事件の知らせがはいる
クロウは韓国にて盗んだヴィブラニウムを取引するという情報もあり、それは長年ワカンダの手から逃れ続けていた因縁の男を捕まえるまたと無い機会だった
ティ・チャラはクロウに両親を殺された親友ウカビから、必ずクロウを殺すか連れて帰るよう頼まれ、最新のスーツを手に現地へと向かう
しかし、その裏ではエリックの恐るべき陰謀が進んでいた



マーベル・シネマティック・ユニバース18作目
『キャプテン・アメリカ シビル・ウォー』で初登場したワカンダの守護者ブラックパンサーの単独作

王にしてヒーローという出自こそソーと似てる部分もあるけど、こっちは人々を導く王という重責、そしてアフリカ系差別問題に真っ向から切り込んだ力強いドラマが特徴で、スーパーヒーロー映画として初めてアカデミー作品賞にノミネートされたことも話題になった

初の黒人スーパーヒーローとして原作でもデビューを飾ったブラックパンサーが題材ということもあって、製作陣にも多数のアフリカ系クリエイターが参加し、アフリカ文化がふんだんに盛り込まれている
トラディショナルなアフリカ文化とSFを混ぜ合わせたような独自の世界観はとにかく新鮮で魅力的

そして物語の核を担うのはティ・チャラとエリックの対立構造と、その背景にある差別問題で、ここをストーリーと絡め切ったのは秀逸
黒人による世界への攻撃と支配というエリックの野望自体はこれまで延々と繰り返されてきた差別への直接的な報復で、最近で言えばブラック・ライヴズ・マター運動のきっかけにもなった白人警官による暴力事件に対抗するように、過激なデモや白人警官への襲撃が行われたことが当てはまるかもしれない
それでまた黒人は危険だなんて思想が生まれることもあるわけで、延々と悪循環の中から抜けきれないのが差別問題の本質の一つだろうと思う
それに対してティ・チャラは、そうした過去を亡き父の意志であろうと間違っていると否定し、国を開く=相互に理解し合うという結末を選択していく
因習に囚われず、新たな視点で世界を変えていくという力強い主張は、例えこの差別問題に関わらずとも大勢に刺さることだと思う
悪を倒すばかりでなく、平和に向かって正しく人々を導くという確固たる意志は、王でありヒーローであるブラックパンサーの言葉だからこそより映えるし、同時にエリックの時代の産んだ被害者としての側面も補強されてめちゃめちゃ上手い
『キャプテン・アメリカ シビル・ウォー』のラストで見せたティ・チャラの慈悲ある行動からしても、ブラックパンサーというキャラクターの深みがよくわかる

そんなキャラクター、戦いの背景にあるテーマ性という重厚さ、そしてもちろんエンタメとしての面白さもあって、MCUの中でも屈指の名作
残念ながらティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンは若くして急逝してしまったけれど、ブラックパンサーというキャラクターの与えた影響は想像以上に大きい
偉大な王、偉大なヒーローの勇姿を目に焼き付けよう
ワカンダ・フォーエバー
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