グラッデン

ブラックパンサーのグラッデンのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.2
黒豹の王、アフリカの大地に駆ける。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品が年間複数本ほど上映される流れが定着し、昨年はDCコミックレーベル作品も量産体制に入る等、大アメコミ映画時代を謳歌できるのは大変素晴らしいのですが、初期のようなインパクトが少し薄れていた印象も。

そんな中、本作が提示した未来のテクノロジーと伝統的デザインのハイブリッドとも言えるビジュアルが大変素晴らしかったです。漠然としたモノでしかなかった未来のイメージが現実世界と地続きの状態で色濃く表現されていたという意味では『アイアンマン』を初めて見た時に感じたインパクトに近いかもしれません。

テクノロジーの見せ方としても、ワカンダ国というマクロなところから、登場人物が利用するガジェットに至るまで上手かったと思います。さらに、ガジェットを押し出すことで『007』シリーズや最近の『キングスマン』を彷彿とさせるスパイアクション要素も加味できていて、今までのマーベル作品にはあまり無かった切り口ではないかと。特に大活躍だった遠隔操作ユニットはAR・VRが普及してきた今日の世界の延長線上にあるものと考えることができる分、魅力的に映りました。

一方、アクション重視のシナリオが疎かにされていたのかといえばそうではなく、『ライオンキング』ではありませんが、主人公の「国王」という立ち位置を踏まえた成長譚を、多様性・国際協調の意義といった現実の社会情勢の要素を絡めて掘り下げたのは良かったと思います。また、こうしたプロセスとして儀式的な要素を取り込んでいる点も見せ方として上手かったかなと。

ディズニー傘下の各スタジオ(スターウォーズは除く(汗) の作品は多面的な切り口で魅力を引き出して全年齢を対象にしながらもファンにしていると常々感じておりますが、本作はその中でも特筆すべきフルコースな作りになっていると思います。それなのに1つの作品として綺麗にまとめ上げていることに改めて驚かされます。

ワカンダ、フォーエバー(腕をクロス)