偽名祐司

アベンジャーズ/エンドゲームの偽名祐司のレビュー・感想・評価

5.0
11年かけたアベンジャーズプロジェクトの終焉であり大団円。
3時間という長さを全く感じさせないとんでもない傑作。
個人的なルール上「シリーズ視聴前提の作品」は5点付けられないんですがそれを押しのけても満点を付けざるを得ません。

会社的な都合により「アイアンマン」から始まったマーベルの映画プロジェクト。初期からこのフェイズ3最終作品である「インフィニティウォー」を目指してました。そして11年。紆余曲折を経て大きく成長したシリーズ。その成長の奇跡とも言える軌跡を締める最高の仕上がりになってます。当然ですが前作「インフィニティウォー」は視聴前提、というか普通に前編後編ですので最低限、それは観ないとダメです。

話はアプリ参照で。前作の圧倒的な敗北の直後。シグナルに呼び出されたキャプテンマーベルにより再び合流を果たした生き残り達。彼らの最後のアベンジ(復讐)が始まろうとしていた…

原作であるコミック版とはサノス側の話の根幹になる大事なキャラクターがいない為、大きく変わってきているのですがそれにしても予想不能の展開を迎えます。某氏がキーパーソンなのは変わってませんが。
開始10分そこそこで訪れる衝撃、笑撃、絶望の展開。最終作品でこんなに笑えるシーンが多くあるとは予想もしませんでした。
その後紡がれる物語は意外にも「インフィニティーウォー」のようなバトルにつぐバトル的な作品ではありません。「アベンジャーズ」の拡大再構成でありました。
「アベンジャーズ」は復讐の話ではなく、絶望的な状況を覆す為にヒーロー達が立ち上がり、結集し、団結するまでの話でした。アイアンマン、キャプテンアメリカ、ソー、ブラックウィドウ、ホークアイ、ハルク。最初の6人がぶつかり合い、手をとり集結する。
前作のフィンガースナップで奇しくも生き残った彼ら。彼らだけでなく他にもいますが。その生き残りの人々の絶望や諦めから再び立ち上がるまでのドラマを描いた群像劇がメインとも言える構成。11年かけて彼ら一人一人のストーリーを紡ぎ挙げてきたからこそ出来るドラマと言えます。

そしてこの作品のとんでもない所は、「これまでの全ての作品をエンドゲームの為に見るべき作品」に押し上げてしまった。という事でしょう。正直この作品を見るまでは、「アベンジャーズ観たいけどマーベル沢山ありすぎてどう見れば良い?」って言われたら「ポイント作品だけそこそこさらえばいけるよ?」って答えてました。個人的に「ソー・ダークワールド」とか「キャプテンアメリカ1」辺り等、割と重要視してないしそんなに面白くない作品もありました。しかしこの作品で今までの全ての作品に散りばめられた伏線、設定、キャラクター、全てを拾い上げます。本気で観てない作品あったら観に戻ろうか、と思わせるほど全てです。それほどに全部見てる人にはご褒美のようなシーン、展開だらけ。

そんなご褒美やドラマを紡いだ後はラスボスであるより凶悪化したサノスとの激闘が待ってます。そこで示されるのはもう本当に少年漫画における王道、ド直球の展開。大作RPGだったり、長期連載作品のラストで感動的にやってくるアレです。「大神」、「グランディア」、「金色のガッシュ」、「うしおととら」「ドラゴンボール」「ロトの紋章」辺りが有名所でしょうか。他にもいくらでも沢山あると思います。そこで絶望の淵に立たされる主人公に届けられる声は「今までの戦い、旅、出会い、足跡は無駄ではなかった」という事。この作品の場合は、それこそ最初のアイアンマンから始め6人から広げ始めたMCU。11年と22作品に渡り地道に作り広げてきた世界と仲間達。その全ては無駄ではなかった、という事が今までで一番絶望的な状況で高らかにうたわれる。それ故にファンが11年待ち望んだ原作のキメ台詞が遂にここで炸裂するのです。この展開にテンションが上がらない人間が果たしているのでしょうか。

最後にこの作品はフェイズ3終了と同時にインフィニティサーガ22作品の締でもあり幾つかのキャラクターの卒業作品でもあります。インフィニティウォーが集結したら終わりではありません。彼らのヒーローではなく一人の人間としての夢の終わりはどんな形であったのか。完全無欠の偶像のようなヒーロー像ではなく一人一人、トラウマや悩み、願いを抱えた人間の側面を持つヒーロー像を描いたマーベル作品だからこそ描くべき必要のあるラストシーン達。感無量としか言いようがありません。エンドクレジットの演出も俳優達への感謝に溢れたもの。涙が溢れる事でしょう。

前作視聴前提であり、最低限シリーズ鑑賞が必要である、という時点でハードルが高い事は否定できないのですが、11年続けてきた作品でここまで奇麗な大団円を見せる映画は他にありません。高いハードルを取っ払ってでも多くの人に観てほしい傑作だと思います。リアルタイムに初日に観れた事は人生の思い出となりました。

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