Donatello

スポットライト 世紀のスクープのDonatelloのレビュー・感想・評価

4.3
実話を元に映画化するのであれば、そもそもそれ自体が人々の興味をそそる話であるか、或いは興味の薄そうな題材でもそれを持たせるように作るべきじゃないか、と常々思うのですがね。

その点本作は多分本国やその他カトリック教区では前者なんだろうと思いますが、日本では後者になると思います。
極めて秀逸な作品。

最初はタイトルとマイケル・キートンさん主演ということから、鳥人間が脚光を浴びる話かと思いましが。

カトリック教会の性的虐待事件の追求という、非常に難しい取材であっただろう事の顛末が、無理のない見事なサスペンス風スタンスで映像化されてる訳ですよ。

ノンフィクションのジャーナリズム系映画というと『大統領の陰謀』や、少し前なら『ゾディアック』がありましたが、そういう新聞記者や新聞社が出てくる作品は多々あれど、客観的な第三者のシーンが殆どなく、映し出される場面のおおよそが新聞社内におけるシーンと取材や調査のシーンのみの、あくまでメインのキャスト5人が出ているシーンでほぼ構成されているところが粋。
それ故まるで自分もチームの一員かのように映画に入り込める。

マーク・ラファロさんと、マイケル・キートンさんの主張のぶつかり合いは、どちらの意見にも理解ができるだけに、今日の晩飯を何にするかで悩んでいる場合ではないと思い知らされたりして。

加えて終盤にマイケルさんが、過去の自らの過ちを認める告白には考えさせられる事もあり、またその演技は胸に迫るものもあります。

こういった大手製作会社の絡まないインディペンデント系の作品がアカデミー賞を獲ると、辻褄合わせじゃないかと思う事も少なくないですが、流石のこれは納得。

エンドクレジット前に映し出される、被害があった教区一覧には、きっと誰しも愕然とする筈。
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