グラッデン

スポットライト 世紀のスクープのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.6
ボストンの地元新聞・ボストングローブのコラム記事『スポットライト』チームの記者たちが、地元のカトリック教会の神父たちによる性的虐待の疑惑を追及していく事実にもとづく物語。

表題『スポットライト』は、本作の記者たちの担当ページの名称でもありますが、マイケル・キートン演じるリーダーが述べていたとおり、本作で追及された事件と記事の関係性こそ、暗闇の中に投じた1つの光=スポットライトのような存在であったことから、まさに本作が取り扱ったテーマそのものを表していると思います。

また、邦題にある「世紀のスクープ」というのも大げさではなく、パンフレットの町山智浩さんの解説にもあるとおり、歴史を揺るがすニュースであると思いますが、闇の中に埋もれた真実を丁寧に紐解いていく作業であることを印象付けるように、静かで落ち着きのある雰囲気の中で観客の注目を浴びるような作りをされていたことが印象に残りました。

一方、事件を追う記者たちの姿を通じて、新聞記者という仕事にもスポットライト=注目が集まったと思います。自分が印象的だったのは、徐々に明らかになる事件のスキャンダラスな側面に対して、彼らの仕事ぶりは一層と辛抱強さを求められる地道な作業を必要以上にアクセントを付けず映し続けたことです。

取材時において、カバンから取り出したノートとペンでメモを取る場面、記者たちが街中を行き来するシーンは作中で何度も見られますが、自分の足で稼いで、直接話を聞いて、記事として文章に書き起こす、といった新聞記者の職業の本質を強く感じされられました。

難しい局面にも辛抱強く取組んでいくこと、仕事のスピード感の中でも丁寧さ・慎重さを見失わないこと、そして最後の締切を守ること、業務内容は全く違いますが、個人的には、1人の社会人として彼らの仕事ぶりに共感する場面も多々ありました。

プロフェッショナルという見方をすると、どうしても仕事人の志・考え方が強調されることは少なくないですが、本当に大切なことは、仕事にどのように向き合うかではなく、どのように仕事に取り組んでいるのか、だと思わされます。もしかしたら、新入社員の頃には気づかなかったと思いますが、責任のある仕事が増えてきた現在の自分だから感じたことかもしれません。

日々の業務にスポットライトは当たることは無いかもしれませんが、来週からの自分に自然と力が湧いてくる映画でした。