スキピオ

スポットライト 世紀のスクープのスキピオのレビュー・感想・評価

3.5
"教会は何でも出来る"

言わずと知れたアカデミー賞作品賞受賞作。豪華俳優陣で一定のレベルを超えているし、既に多く語られている褒めポイントには概ね同意だけど、べた褒めばかりもつまらないので、あえての変化球。

神父による児童への性的暴行、教会上層部の隠蔽。冒頭、警察署のシーン数分でこれから語られることの根深さ、凶悪さをすべて説明したスマートな筆致はすばらしい。が、それとは裏腹に、以降は愚直に、どまんなかに、鈍重に、「スポットライト」チームの教会告発までの地道な取材の過程を描いていく。わかりやすい娯楽性、爽快感は皆無、アカデミー賞という「記録」は獲ったが「記録にも記憶にも残る傑作」かと言われると難しい。

マジメすぎ。なので映画の評価もどまんなか3.5点どまり。もちろんスポットライトチームの功績への評価とは別です。

監督いわく、スポットライトチームの発表と努力を汚したくなかったからエンタメ要素を省き、ストレートに描いたとのことで、要は映画で彼らの真摯なジャーナリズム(新聞発表)を再現したかったんだろう。結果アカデミー賞を獲ったし、それはまぁ理解はできる。しかし色恋要素を入れろとは言わないけど、それでも脚本、編集、音楽、撮影とかでもっと娯楽性と両立する「記録にも、記憶にも残る一作」にするためにやれたことはあったんじゃないか、厳しいようだけど「この題材でマジメに作るだけならわりと誰でもできない?」と思ってしまった。

「社会に伝えるべきことを伝えるため」だからと映画が、飾り気のない「再現ビデオ」に徹してしまうことが「映画として、正しいこと」なの?と。(本当、これ書いてる自分何様?って感じだけど…)