びこえもん

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のびこえもんのレビュー・感想・評価

3.6
大人の事情でグリンデルバルドがデップからミケルセンになりましたが、そんなに違和感はないというかむしろデップよりハマっている気さえします。
個人的にはストーリーは割と薄味な気がしました。ダンブルドアの秘密って結構仰々しいタイトルつけてますが、言うほど衝撃的には感じなかったです。
演出はやはりハリポタに比べると少しコミカルなところが多め。ただあるクリーチャーが出てくるところは『バイオハザード』かよってくらいの割とエグめのグロシーンをシュールギャグっぽくしており、トラウマになる人もいるかも。

さて大規模な娯楽作品シリーズではままあることですが、商売うまいなと思うのは世界の色んなところがフィーチャーされる点。「次は私の国が舞台になるかも…?」という期待感を持たせられるので。おそらく最近はやりの多様性云々とかもあるとは思いますけど、個人的にはハリポタシリーズにおいてはホグワーツという局所に良くも悪くも縛られていた『ウィザーディングワールド』の世界観をもっと拡大して色々展開できそうな枝葉を広げたいのではないかと思います。

して、今回重要な役割をになう魔法生物は中国の四霊獣のひとつである麒麟。これまでもハリポタにチョウ・チャンがいたり前作に河童が出てきたりと東洋的な要素は示唆的に出てきてはいるんですが、それらに比して今作ではがっつりとアジアンな世界観が入り込んできています。

東洋にある魔法界の要衝としてブータンというチベット文化圏が設定されているのは、現実世界でも密教が信仰される隔絶された高山帯だけあってどこか禁足地かのような神秘的イメージを持つ場所なので個人的に良いチョイスだなと思いました。

と同時に、ラサなど狭義のチベットそのものを避けてちょいマイナーなブータンにしたのは何かと近年のエンタメ映画にありがちな大いなる力が働いてるのではと斜に構えた見方もできます。麒麟の登場や国際魔法使い連盟トップの立候補者の一人が中国系というのを見ても中国市場を意識してないことはないと思いますので、特に舞台である1930年代はマグルの史実ではちょうどチベットが事実上独立国家だった時代ということもあり、雰囲気は汲み取りつつなるべく波風立たせずに描写ができる最適解としてブータンっていう落とし所だったのではないでしょうか。
あんまりポリティカルな観点で論じるのも是非が割れるところだとは思いますが、ある意味そういう部分でもなかなか絶妙なとこをついた塩梅と言えるのかもしれません。

ただ経緯どうあれ、ブータンにとっては最近『ブータン 山の教室』がオスカーでノミネートされたのも併せて注目を集める良い機会になりそう。いかにもチベット圏っぽい建造物が山の上に立ち並ぶ街並みはなかなか壮観。いつか行ってみたいもんです。

さて次はどこが舞台になるでしょうか、次作以降も少し気になります。