夏藤涼太

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密の夏藤涼太のレビュー・感想・評価

3.9
超絶今さら、見ました。

個人的には2よりは好きなものの…結構がっつりガッカリしました……
でも今後のシリーズには期待が持てそうなので、テンション下がりつつも次回作はまだ楽しみ。

良かったところは、2で感じた不満が概ね解消されていたこと。

ハリポタ本編映画とは違ったファンタビの魅力として
①JKローリングが映画用に脚本を書き下ろしているから、本編映画のような情報過多&ダイジェスト脚本ではない
②近代の人間界がメイン舞台で、ロマンがある
③原作がない上に本編の過去編ということで、考察が盛り上がる
④JKローリングの想像力が爆発した魔法動物にワクワクする
⑤主要人物が大人だから雰囲気がシックで、最強魔法を使いまくるので映像的に派手
あたりにあったと思うんだけど…2ではこれらの美点が(③以外)ほぼなくなっていたので、個人的にはかなりガッカリした。

ただ3では、この辺の問題は概ね解消されていたかと。

1ほどではないにせよ魔法動物はたくさん出てきたし、ワクワクする魔法描写も多かったし、ベルリンやチベットと色んな人間界が出てきたし、ストーリーもシンプルにはなった
……だが、いやこれは流石に情報量を減らしすぎだろ!?

3時間の脚本を2時間にまとめたのか?ってくらい、悪い意味で濃かった2に対して、3は2時間半近くあったのに、1時間分くらいしか内容を感じなかった。
とにかく内容が薄すぎる。これが本作最大の欠点の1つかと。

だが恐らく、これは制作の問題というか、大人の事情かと推察した。
全3部作を5部作に引き延ばしたことが3の制作時に発表されてたけど、明らかにこの悪影響を感じた。
そして今回は主人公ニュートと、陰の主人公クリーデンスにとってのシリーズヒロインであるティナとナギニが、なんと両方とも登場しない。
これはキャストのプライベートな事情なのでどうしようもないとはいえ、そのせいでダンブルドア軍団がパッとしないし、シリーズを通した裏主人公であるはずのクリーデンスもぜんぜん活躍せず、まぁ影が薄かった。

あと制作がコロナ禍と被ってたのも、影響はあっただろう。
そんな感じで色々と大人の事情を感じる映画で……そっちばかりが気になって、まったく話に入り込めなかった。
ちなみに、マッツ・ミケルセンには個人的には何も問題は感じなかった。

2つめの最大の欠点は、心情描写の薄さである。
ストーリーが薄くても、ドラマに重点が置かれていれば別にいいとは思うのだが…

恐らく今作最大のドラマである、「ダンブルドア(家)とクリーデンスの愛」と「クイニーとジェイコブの愛」が、あまりにもあっさりすぎた。あっさりというか、意図的に心情描写を排除したのかと勘ぐるレベル

いやまぁ確かに映像では心情描写は難しいけども…もしかしたら、小説で読んだらこの辺の心情描写が補完されていて、名作になっていたりするのだろうか…?

ちなみに、もうひとつの大きなドラマである「アルバスとグリンデルバルトの愛」はけっこうよかった。

ただ、地味に意味不明なのがユスフ。そもそもこいつは2の時点で目的(動機)が消滅していたので、行動原理がまったくの謎だった。

【以下ネタバレ】

今作のクライマックスにあたるのは選挙洗濯機なんだろうが……まぁ茶番というか、2と同じく、みんな大人なはずなのに子供みたいな思考回路と頭脳でがっくりした。

グリンデルバルトは闇の魔法使いなんだから、死体を操る魔法を使うくらい、想像する者はいなかったのだろうか?

茶番じみていたから、その後の逆転劇も特に盛り上がらないし、グリンデルバルトがめっちゃかませに見えた。こいつがラスボスで大丈夫なのか。もしかしてクリーデンスがラスボスになったりするのか…?

…ただ、この茶番劇に関しては、意図的なのかもとも思った。

今作は1930年代のベルリンが舞台で、連盟代表がベルリンの悪い魔法使いだったり、「危険な時代は危険な者を求める」みたいなセリフがあったりと、明らかにヒトラー政権を意識した造りだったが、ヒトラーもユダヤ人や共産主義者への陰謀論で天下を取ったわけで。
そんな当時の大衆の愚かさに現代人は呆れていながら、つい最近も、アメリカでは移民や民主党への陰謀論でトランプが大統領選を制したわけで…

今作は大衆の愚かさと時代の危うさをを踏まえた社会風刺映画だったのだ、と思えばまぁまぁ面白い。JKローリング、そういうことしそうだし

…とまぁ色々不満はあるものの、2のガッカリポイントはほぼ解消されていたし、今回は大人の事情で制作が破壊されていたとも思うから…今後に期待……?

WW2が絡めば嫌でも面白くなると思うから、早く時代を進めてほしい。

個人的な一番のガッカリポイントは、2で唯一の良心と感じたナギニが一切登場しなかったことでしたので、4では頼むからなんとか出して下さいお願いします。

あと、これはハリポタ本編でも感じていたことなんだけど……魔法使いたちのレベルが上がるに連れて、魔法じゃなくてただのビームの打ち合いみたいになって魔法バトル感がなくなっていくのが、皮肉。

最後に。
今回の長髪になったエズラ・ミラー、ずっとSWのアダム・ドライバーに見えて仕方がなかった。
夏藤涼太

夏藤涼太