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ヘイル、シーザー!のkuuのレビュー・感想・評価

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)
3.8
『ヘイル、シーザー!』
原題 Hail, Caesar!.
映倫区分 G.
製作年 2016年。上映時間 106分。

ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が、ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタムら豪華スターを迎えて描いた監督作。
コーエン兄弟監督作常連のフランシス・マクドーマンドやティルダ・スウィントン、レイフ・ファインズ、ジョナ・ヒルらも出演。

1950年代のハリウッド。
あるメジャースタジオの命運を賭けた超大作映画「ヘイル、シーザー!」の撮影中、主演俳優で世界的大スターのウィットロックが何者かに誘拐されてしまう。
撮影スタジオは混乱し、事態の収拾を任された何でも屋が、セクシー若手女優やミュージカルスター、演技がヘタなアクション俳優ら個性あふれる俳優たちを巻き込み、事件解決に向けて動いていく。

父ちゃんはミネソタ大学で経済学、母ちゃんは美術史の教師の元で育ったコーエン兄弟は、作風は両親の影響を受けてるのを感じます。
また、個人的には現在活躍する監督の一人であると思う。
彼らの作品は、古い映画へのオマージュと同時に、ジャンルを変えたり組み合わせたりすることで非常に有名になり、故にチョイ分かりにくい作品もあるが、ジャンル・ベンダー(ジャンル関係なしに”いいモン”を製作者がスキルを織り交ぜながらつないでいく)として評価されてる。
例えば、ブラックコメディスリラー『ファーゴ』、
現代的な西部劇『ノーカントリー 』、
スーパーナチュラルホラー、
ブラックコメディ、
ジャンルを超えた『バートン・フィンク』などなど。
これら作品は、傑作と云われていますが、今作品では、過去のあらゆるジャンルを一度に楽しめる、オマージュとも混乱(笑)ともとれる映画を作ろうと試みたんやと感じました。
プロットとキャラはフィクションやけど、20世紀前半にフィクサーとして知られるハリウッドの重役だった実在の人物、エディ・マニックスを描いたものです。
物語の舞台は1950年代初頭のある日、マニックス(ジョシュ・ブローリン)は彼の勤める映画スタジオでその日の問題を解決しなければならないが、中でも映画スター、ベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)の誘拐が問題となる。
しかし、映画のほとんどは映画スタジオの人々が作っている映画を見るもので、プロットはかなり表面的なものでした。
少し奇妙に聞こえますが、マニックスの仕事の一部は映画を観て、それが正しい方向にあるかどうかを確認することなので、今作品の大部分はそれであり、コーエン監督が映画の中に多くの映画を作り出すことができる非常に賢い方法なんかな。
西部劇、大河ドラマ、恋愛ドラマ、ノワール、潜水艦、ミュージカルなど、100分の上映時間の中で、ほぼすべての作品が異なるジャンルで構成されている。
撮影所自体が生き生きとしていて、全員が常に何かをしていて、映画に一定のエネルギーがあるように感じられました。
登場人物のほとんどは、映画スターやし観てる側は彼らが誰であるか知ってるかのように、時には何の背景もなく登場人物が現れては消えてく。
今作品は、視聴者をその世界に引き込み、ガイドとなる物語がなければ、すぐに混乱し、方向感覚を失うんちゃうかな。
しかし、今作品は、素晴らしいストーリーを語ることよりも、ハリウッドの華やかな時代へのラブレターを書くことに重きを置いているように思えます。
視聴者のためちゅうより、映画製作者のための映画なんかな。
映画の中で常に起こっていることを完全に理解しようとすることはほぼ不可能で、間違いなく不必要なことでもあるようでした。
むしろ、この映画に注がれているすべての愛情とエネルギーのために、この映画を見る方が良いように思えます。
演出面では、数分の演技にもかかわらず、完璧なキャスティングがなされてるかな。
すべての俳優が自分のある部分を演技に取り入れることで、ある種のユーモアを加えてました。
例えば、ジョージ・クルーニーは、映画界のスターダムにのし上がったが故に、何でもそのまま受け入れてしまうようなナイーブなキャラを演じてたけど、現在最も尊敬されている俳優の一人であるジョージ・クルーニーが演じているからこそ、より可笑しさが増すのやと思います。
コーエン兄弟と頻繁にコラボレーションしているロジャー・ディーキンスによる撮影は、ジャンルが変わるたびに美しく変化し、体験に大きなアクセントを加えてました。
コーエン兄弟の最高傑作ではないことは確かやけど、初期のハリウッドとそこから生まれた映画の種類についての知識があれば、この映画は、映画のグラマラスな時代への楽しいラブレターであり、映画ファンは楽しめる作品になってるかな。
余談ながら、作中、ディー・アナ・モラン(スカーレット・ヨハンソン)が未婚のまま妊娠したことを知られないように、自分の子供を養子にするちゅうアイデアは、1930年代にロレッタ・ヤングに起こったことと似てる。
彼女はクラーク・ゲーブルの子を妊娠し、「養子」にするまで19カ月間、娘を隠していたそうです。
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