思い描いた未来は夢のように遠い。なぜこうなってしまうのだろうと、ひとり物思いにふける大人たちもかつて子どもだった。年を重ねればわかることは増えても、すべてわかるわけではない。心許なさはあの頃のままあるのに、いつも大丈夫そうな顔をしてしまうのはどうして。
手をはなしてしまえば、またたく間に崩れていくのではないかと思う。けれども、それはぎりぎりの表面張力であふれないように保ってきた未来への不安や恐怖のとなりで、一所懸命に生きてきたことの証左であった。なごやかではないけれど、その生命力とやさしさにわたしのこころの水面がふるえた。うまくきれいには生きていけなくても、その呼吸はあつく切実にくり返される。